史上初、小惑星エレクトラに3つ目の衛星を発見。2つ以上の衛星を持つ小惑星一覧

今回は小惑星の衛星のお話。
一昔前、小惑星には衛星は存在しないと言われていたのですが、近年の観測技術の向上により、今では何百もの衛星が発見されています。
そして新たに3つの衛星を持つ小惑星が登場しました。

今回は、3つ目の衛星が発見された小惑星 エレクトラの話と、2つ以上の衛星を持つ小惑星の一覧を掲載します。

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小惑星エレクトラに3つ目の衛星を発見

小惑星エレクトラ(中央)と3つの衛星の写真。ヨーロッパ南天天文台による撮像。Credit:
ESO/Berdeu et al., Yang et al.【引用元

これは、チリのパラナル天文台にあるヨーロッパ南天天文台(ESO)にある観測装置「SPHERE」によって撮影された写真です。

中央にある楕円形の大きな天体が小惑星エレクトラ。そこを中心として、6時半の位置、9時の位置、11時の位置に3つの天体が写ってますが、これが小惑星エレクトラの衛星です。この3つのうち、もっとも近くに見える6時半の位置の衛星は、今月(2022年2月)、タイ国立天文学研究所の研究グループによって発見が報告されました。

これまで衛星が2つある小惑星はいくつか発見されていたのですが、「3つの衛星」というのは史上初の発見だそうです。

小惑星エレクトラは、火星と木星の間にある小惑星帯にある小惑星で、大きさや公転周期などは以下の通り。

◆小惑星エレクトラの諸元
・発見日 1873年2月17日
・軌道長半径 3.126 AU
・公転周期 5.53 年
・長短径 215 × 155 ± 12 km
・質量 (1.28 ± 0.10) × 1019 kg
Wikipediaより引用

3つの衛星のデータは以下の通り。

◆小惑星エレクトラの衛星の諸元
衛星1 S/2003 (130) 1
 軌道長半径 1,252 ± 30 km
 公転周期 5.287 日
 直径 6 ± 2 km
衛星2 S/2014 (130) 1
 軌道長半径 501±7km
 公転周期 1.192日
 直径 2±0.4km
衛星3 S/2014 (130) 2
 軌道長半径 344±5km
 公転周期 0.679 日
 直径 1.6 km前後

 

小惑星に衛星はないと言われていた時代も

小惑星の衛星のついては、過去にも書いたのですが、

小惑星イダの衛星・ダクティル。小惑星にも衛星が存在することを証明した天体
先日、火星の衛星であるフォボスの記事を書いたのですが、フォボスについて色々調べているときに、面白いものを発見してしまいました。 太陽系の主な衛星の大きさを比較したイメージ図です。これを見て、 「へぇ~、火星の衛星って二つともこんなに小さいんだ」とか 「さすが木星の四大衛星は大きいな!」とか 思いながら眺めていたのですが、ふと違和感を感じました。 図の一番上の段を見てみましょう。 地球 - マーズ ...

1993年に小惑星イダに衛星ダクティルが発見されるまで、「小惑星には衛星は存在しない」と断言する学者がいたぐらい、小惑星の衛星は科学的に難しい存在でした。

衛星ダクティルの発見は、「小惑星に衛星が存在するか否か?」の論争に終止符を打ったんですね。それからというもの、現時点までに200個以上の衛星が発見されています。「ないかも」と思いながら探すのと、「ある」とハッキリしたあとに探すのでは、効率が違うのかもしれませんね。単純に観測機器の進歩かもしれませんが。

ただ、「ある」ということはわかりましたが、「どうやってできたか」はまだ謎のままです。小惑星というのは惑星と違って、ものすごく引力が小さいので、他の天体を引き寄せるのは困難ですよね。手頃な小さな天体が外部から飛んできたとしても、小惑星の引力ではトラップされずに通り過ぎてしまう確率が高いです。

現段階でもっとも有力な説は以下の通りです。

2つの天体が衝突し、粉々に破壊されたあとに、その破片同士が互いの重力によって再集結したものを「ラブルパイル」と呼ぶが、ラブルパイルが形成される際に、大小2つ以上の塊ができると、それが「小惑星」と「衛星」になる、という説。

ふむふむ。わかりやすいですね。まあ、衛星の「でき方」は一通りではないかもしれませんが、実際に衛星がある小惑星を詳しく調べてみて、それがラブルパイル天体だったら、この説はかなり有力になりますね。

余談ですが、JAXAの探査機はやぶさ(初号機)が行ってきた小惑星イトカワもラブルパイル天体だったらしいです。はやぶさのたくさんある成果の1つですね。素晴らしい。
 

衛星を2つ以上持つ小惑星一覧

太陽系の小惑星で、2つ以上の衛星をもつものの一覧です。2022年2月現在、9つの小惑星が該当します。

※()内→小惑星の軌道の種類
※直径→その天体の直径
※軌道→軌道長半径または小惑星からの距離

■(130)エレクトラ(小惑星帯) 直径215×155±12km
 衛星1 S/2003 (130) 1 直径6±2km 軌道1,252±30km
 衛星2 S/2014 (130) 1 直径2±0.4km 軌道501±7km
 衛星3 S/2014 (130) 2 直径1.6 km 軌道344±5km

■(45)ウージェニア(小惑星帯)  直径214.6 ±4.2 km
 衛星1 プティ・プランス 直径12.7 ±0.8km 軌道1,184 ±12km
 衛星2 S/2004 (45)  直径1 6km 軌道700km

■(87)シルヴィア(小惑星帯) 直径384 ×264 ×232km
 衛星1 ロムルス 直径18±4km 軌道1,356 ±5km
 衛星2 レムス 直径7±2km 軌道706 ±5km

■(93)ミネルバ (小惑星帯) 直径141.6±4.0km
 衛星1 Aegis 直径4km 軌道630km
 衛星2 Gorgoneion  直径3km 軌道380km

■(216)クレオパトラ(小惑星帯) 直径217×94 ×81km
 衛星1 アレクスヘリオス 直径5km  軌道775km
 衛星2 クレオセレネ 直径3km 軌道0-380km

■(3749)ベイラム( 小惑星帯) 直径7km
 衛星1 S/2002 (3749) 1  直径1.5km  軌道310±20km
 衛星2 S/2007 (3749) 1 直径0-3km 軌道0-20km

■(47171)レンポ(冥王星族) 直径328 – 440km
 衛星1 パハ  直径123-165km 軌道7,640±460Km
 衛星2 ヒーシ 直径223-299km  軌道867km

■(136617)1994CC(アポロ群) 直径0.65km
 衛星1 S/2009 (136617) 1  直径0.05km 軌道 0.5km
 衛星2 S/2009 (136617) 2 直径0.10km 軌道1.2km

■(153591)2001SN263(アモール群) 直径2 – 2.8km
 衛星1 S/2008 (153591) 1  直径1-1.2km 軌道?
0-17km
 衛星2 S/2008 (153591) 2 直径0.4-0.5km  軌道0-4km

以上。

現在、ものすごい勢いで天体が発見されていますので、これからもどんどん増えて行くことでしょう。

そのうち、4つ、5つの衛星をもつ小惑星も発見されるかもしれませんね。胸アツです!

 

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