今回は太陽系でも最も多い場所にある天体のお話です。
冥王星よりも遠くの太陽系・太陽系外縁天体
私が子供のころ、太陽系の最果てと言えば9番目の惑星である冥王星で、そこから先は太陽系の外側になると思っていました。
これは、私が無知だったからではなく、当時は人類全体がそういう認識であり、冥王星までが「太陽系」だったのです。その半径は39.4au。すなわち地球と太陽の距離の39.4倍の半径の円。それが太陽系のすべてでした。(※1au=地球と太陽の距離)
しかし、1992年にデビッド・C・ジューイット氏とジェーン・ルー氏によってアルビオンという冥王星の外側を回る小惑星が発見されてから一気に世界が豹変しました。その後何年かの間に、その領域の多くの天体が発見され、後に海王星以遠の30au~55auのエリアは小さな天体が数多く存在するエリアとして「エッジワース-カイパーベルト」と呼ばれるようになります。太陽系は大きく広がったのです。
その後、準惑星という新しいカテゴリが設定され、そこに分類されたエリスという天体は軌道長半径67.8au。離心率がかなり大きい楕円をゆっくりと回っているエリスは、最も太陽から離れたときには、なんと97.7auという距離になります。冥王星の倍以上の距離ですね。
ちなみに、海王星以遠にある太陽の周りを周回する天体のことを総称して「太陽系外縁天体」と言います。
2018年、最も遠い場所にある天体2018 VG18を発見
2018年11月のこと、ハワイにあるすばる望遠鏡で観測を行ったカーネギー研究所のチームは、さらに遠くに存在する天体を発見しました。
その天体の軌道長半径は95.2au。エリスの約1.5倍の距離です。しかも、エリスよりもさらに離心率が大きいため、発見時の太陽からの距離は125au、最も太陽から遠いときは168.7auという遠方に位置する計算になります。
すごいですね・・・
30年前の太陽系は半径39auしかなかったのですが、この天体は遠日点で168auです。「太陽系」という言葉の定義はいろいろあるのですが、太陽の周りを回っている天体の範囲が太陽系だとすると、冥王星が最遠だった時代と比べて、4倍以上広がったことになります。たった30年弱の間にです。
この天体は「2018 VG18」という仮符号が付き、その時点で最も太陽から遠い場所にある天体だったため、「ファーアウト(Farout)」という愛称で呼ばれるようになりました。
さらに遠くにある天体「ファーファーアウト(Farfarout)」
ファーアウトを発見したカーネギー研究所のチームは、その直後、また遠くの天体を発見します。今度は140auの彼方にある天体です。
2020年現在、この天体については詳しいことがわかっておらず、仮符号も付いていないのですが、ファーアウトよりも遠くにあるということから「ファーファーアウト(Farfarout)」と呼ばれています。
今、太陽から最も遠くにある既知の天体はこのファーファーアウトになります。
観測機器の高性能化と電子化
現在のところ、太陽系外縁天体は2000個以上発見されています。1992年にアルビオンが発見されるまでは冥王星が最遠だったのに、ここ30年の研究成果は凄まじいです。なぜこんな飛躍を遂げたのでしょうか?
それは、観測機器の高性能化、特に電子化によるものが大きかったという話をどこかで読みました。天体観測は光学的に肉眼とフィルム写真で行うものだったのが、1990年代からはCCDセンサーによる電子データで観測結果が得られるようになりました。
これにより、精度が向上することはもちろん、画像をそのままコンピュータで処理できるようになったということが大きいようですね。
近年の研究結果から、さらに遠い場所に巨大な惑星が存在する可能性が指摘されています。カイパーベルトの小惑星の挙動に、そのような大きな天体が無いと説明ができない現象があるらしいです。
それは、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星に続く9番目の惑星となることから、「プラネット・ナイン」と呼ばれています。
観測技術の向上により、そんな惑星が発見される日も近いかもしれませんね!