ニップ。円形の盤で戦う角が無いリバーシ。円形オセロ。

今回は少しレアなボードゲームのお話です。

記憶の底に眠っていたキーワード「ニップ」

子供がテレビゲームばかりやっているので、画面を見ないでも遊べる良いオモチャがないかといろいろ探していたとき、偶然それを発見しました。

株式会社ハナヤマが出している「ゲームスタジアム11」というオモチャ。その商品説明に、こう書かれていました。

11種類のボードゲームで、さあ対戦!

盤面に凹みがあり、コマがズレにくい新構造!11種類ものゲームをコンパクトに持ち運べるお得なセットです。

ゲーム内容
リバーシ 将棋 囲碁七路盤 ダイヤモンドゲーム ソリティア フォックス&ヘンズ 五目並べ はさみ将棋 チェッカーゲーム 歩なし将棋 ニップ

ん?

ニップ?

どこかで聞いたことかあるような、、ニップニップ、、、

ニップ!!

思い出しました。
小学生のとき、お友達のY君の家にあったボードゲーム。ルールはオセロやリバーシと全く同じなんだけど盤だけが違って、オセロのように8×8の盤ではなく円形をしていた珍しいゲーム。Y君の家以外で見たことがなく、Y 君以外からその名を聞いたことがなかった超レアゲーム。

それがニップだ!!

1980年前後のお話ですね。約40年ぶりにその名前を聞きました。

 

ニップとは?

無作為に100人選んで質問したら、おそらく99人は「知らない」と答えるでしょう。それほどこの「ニップ」というゲームは知名度がありません。小学校のときにY君の家で遊んで、その後も他の友達にニップの話題を振っても、誰一人知りませんでした。真剣に探したわけでもありませんが、おもちゃ屋さんで見かけたこともなかったので、「本当に実在する製品だったのか?」という疑問を抱いたぐらいでした。

ニップというのは、白と黒が裏表になった駒を使い、縦横斜めに相手の駒を挟むとひっくり返して自分の駒に出来るという、オセロやリバーシと全く同じルールのゲームなのですが、使用する盤だけが違います。ニップの盤はこれです。

「ニップ」の盤。(Wikipediaより引用)

なんと丸い! 円形なのです!

これを見ただけで察しのいい方はお気づきだと思いますが、このゲームの盤には「角(カド)が無い」んです。オセロって初心者の頃は、「とにかく角を獲れ!」「角を獲られるな!」と教わるのですが、このゲームではその作戦が通用しません。もっと専門的な言い方をすると、ニップでは、もう終局までひっくり返すことが不可能な駒、いわゆる「確定石」を作ることが出来ないんですね。したがって、、、、

オセロとはまったく別物のゲームである

というのが私の認識です。

外側の円周の部分が20マス(厳密に言うとマスでは無いのですが便宜上マスと表現します)あるのですが、例えばその20マスのうち、19個が自分の駒だったとしても、最後の1マスに相手の駒を置かれたら、20個すべてが相手の駒になってしまいます。

全体のマスの数はオセロよりの少なくて52マスしかありませんので、円周上の20個をすべて獲られたら、それだけで4割近く持って行かれます。ずっと優勢に進めていても、最後の何手かで大逆転されてしまう可能性があるゲーム、それがニップなのです。

 

ニップなぜ流行らなかったのか?

とまあ、一見面白そうなボードゲームなのですが、宣伝が足りなかったのか、ゲームとしての魅力が足りなかったのか、知名度はびっくりするほどありませんでした。調べてみると、当時販売していたのは今と同じハナヤマだったようですが、単品での製品はその後生産終了となっています。(2020年現在は上で説明した「ゲームスタジアム11」に含まれているのみ)

正直言うと、Y君の家で何度もニップを遊んだ小学生の私でさえ、「これは面白い」と思ったのは最初の何回かで、結局は「オセロの方が面白いかも」と思っていました。

小学生のときの話なので、もちろんたいした考察はしていなかったのですが、今思うと「ニップは戦略の立てようが無かった」というのが理由だったのではないかと思います。

オセロの場合は「とにかく角を獲りたい」「角を獲るためにそのとなりのマスに相手を誘導したい」という目標があり、それに向かって試行錯誤していたんですよね。でも、ニップは何を目標にゲームを進めていけば良いかわかりませんでした。もちろん、私が知らなかっただけで戦略はあると思うのですが、攻略本があるわけでもなく、そこまで夢中にはなれなかったんですね。

流行らなかった理由としてもうひとつ考えられるのは、「オセロの二番煎じ」というイメージがあったからではないでしょうか? オセロと同じぐらいので値段で「二番煎じ」なら、やっぱりオセロの方を買いますよね。だから、盤を裏表とかにして、オセロ(という名前は登録商標で使えないのでリバーシとか)と両方遊べるような商品にすればもっと流行ったのかもしれません。

うーん、アイデアは悪くないのに、残念なゲームですね。

さて、この「二番煎じ」なんですが、実は違うかもしれないのです。

 

ニップの方がオセロよりも歴史が古い?

Wikipediaの「オセロ(遊戯)」のページの中で、ニップについて少しだけ触れられているのですが、そこに気になる記述を発見しました。


ニップ

リバーシのほかに、オセロに先行する類似ゲームとしては、ニップと呼ばれるものもある。

オセロと異なるニップの特徴は盤面の形である。現在知られているニップは、円形の盤面を用いる。一方、黒井千次は、自身が幼少期に遊んでいたニップの盤面は四角形から四隅が欠けたものであったとしている。

ニップがどのような経緯で生まれたものか詳細は明らかになっていないが、1933年に松本彌助名義で実用新案登録がなされている。
 ※Wikipediaより引用

ええええ?? ちょっと・・・

「オセロに先行する類似ゲームとしては、ニップと呼ばれるものもある。」
「1933年に松本彌助名義で実用新案登録がなされている。」

なんとこれが正しければオセロの前にニップが存在していたことになります。

まず「松本彌助さん? 誰?」って感じなのですが、今はとりあえず置いておいて、年号だけに注目しましょう。wikipediaによると、初めてオセロがツクダオリジナルから商品化されたのは1973年。ほぼ同じルールのリバーシは19世紀からあったようですが、日本では知られていなかったようなので、事実上1973年が日本における「オセロ元年」だったと言えましょう。

でも、ニップは「1933年に松本彌助名義で実用新案登録がなされている」らしいので、少なくともニップがオセロの「二番煎じ」ではなさそうです。

とにかくニップについてはネット上でも情報があまりないので、現段階ではこの程度しかわからないですね~。調査は続けてみますので、何かわかったら追記しますね。

いやいや、ゲームも奥が深いですね!

とりあえず、現時点で製品として存在するニップは、最初に紹介した「ゲームスタジアム11」のみのようです。

 

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