火星の衛星・フォボスってどんな天体? JAXAの火星衛星探査計画でフォボスからサンプルリターン

2020年5月25日

JAXAが2024年にスタートする予定の火星衛星探査計画(MMX)のターゲットがフォボスに決まりましたね。はやぶさ、はやぶさ2の開発で培った技術を使って、今度は小惑星ではなく、火星の衛星から試料を採取して地球に持ち帰ろうとしています。

火星衛星探査計画のイメージ図(Wikipediaより引用)

 

火星衛星探査計画(MMX)とは?

火星衛星探査計画とは、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が計画している火星の衛星の探査計画です。英語では「Martian Moons eXploration」と言われ、その一部をとって「MMX」と略称されています。2024年9月に探査機の打ち上げが予定されています。

火星にはフォボスダイモスという二つの衛星があり、どちらの衛星をメインに探査するのかは検討中でしたが、つい先日の2020年2月21日、フォボスの方をターゲットにするという発表がありました。



今回の探査計画は、火星の衛星を光学的に観測するだけではなく、はやぶさシリーズで培った技術を生かして、衛星表面の砂を地球に持ち帰るという、いわゆる「サンプルリターン」を行う予定になっています。現在のところ、火星の衛星の起源は謎であり、いくつかの説が唱えられておりますが、このサンプルリターンで明らかになることが予想されています。

2024年9月に打ち上げを行い、2025年8月に火星の周回軌道に投入、その後フォボスの周回軌道に移り、約3年間、サンプル採取を含めた観測を行うとのことです。最後はもう一つの衛星・ダイモスをフライバイしながら観測を行い、2029年に地球に帰還する予定。成功すれば史上初の火星圏からのサンプルリターンになるだけではなく、初の火星圏の往復になります。これまで、火星圏から地球に戻ってきた探査機はありませんからね。

ただ、これまでサンプルリターンを行った小惑星イトカワやリュウグウと違い、今回はフォボス自身の重力も大きいですし、間近に巨大な重力を持つ火星もありますので、いろいろと難しい側面があるように思います。一つ間違えると火星に墜落、みたいな・・・。

日本による火星圏の探査は、1998年に打ち上げられた「のぞみ」以来2回目の挑戦になります。のぞみは残念ながら大規模が太陽風による機器トラブルで火星周回軌道へは入れませんでしたが、MMXではその無念を晴らしてもらいたいです。

ちなみに、探査機の名前はまだ決まっていないようです。私の頭の中ではすっかり「はやぶさ3」なのですが、根本的にプロジェクトが違うので、別路線になるのかな?

 

フォボスってどんな天体?

さて、それでは今回ターゲットとなった火星の衛星・フォボスがどんな天体なのかを見てみましょう。

火星の衛星・フォボスの写真(wikipediaより引用)

「衛星」というと、まずは地球の月を思い浮かべると思うのですが、この写真を見る限り、その姿形は地球の月に似ていませんね。なんとなくジャガイモ? 衛星というより隕石に近いイメージですね。

直径は最も長い軸で約27kmしかなく、地球の月の1/100以下のサイズとなっています。おそらく球形となるためには重力が足りないんですね。

特筆すべきは、フォボスが周回している軌道です。軌道の平均半径は9,376km。これだけだとピンときませんが、火星自身の半径が3,397kmですので、火星の上空6000Km以下という、ものすごく主星に近いところを周回していることになります。これだけ主星に近いと主星の重力で衝突してしまいそうですが、そうなっていないのはそれだけのスピードで公転しているということなんですね。



フォボスの公転周期は、なんと7時間39分。火星の自転周期は地球とほぼ同じで24.6時間ですので、火星が1周自転する間に、フォボスは火星の周りを3周する計算になります。そんな低空をそんなスピードで飛ばれたら、火星の表面で見るフォボスはすごい勢いで移動しているのではないでしょうか。見てみたい気もしますね。

 

フォボスのこれまでの探査実績

そんなフォボスなんですけど、これまでどんな探査がされたのかを調べてみました。

1971年 マリナー9号(アメリカ)  鮮明な写真が撮影される
1988年 フォボス1号(ソ連) 火星の向かう途中で通信途絶
1989年 フォボス2号(ソ連) 火星周回軌道からフォボスを観測。フォボスに着陸機を投下する予定だったが、その前に通信途絶。
2003年~ マーズ・エクスプレス(欧州宇宙機関) 火星周回軌道からフォボスを撮影
2011年 フォボス・グルント(ロシア) 打ち上げ失敗

 
え、これだけ??

遠方から観測された実績はまだあると思いますが、近接探査はこの程度のようです。そもそも火星圏の探査は実に失敗が多く、なかなか思うように行かないみたいですね。あちこちで火星の有人探査が計画されていますが、もっと精度を上げないと恐ろしくて行けませんね。

ちなみに、上で紹介したフォボスの写真は誰が撮ったんだ?って感じですよね。タイミング的にはマーズ・エクスプレスによって撮影された写真なのかなーと推測はしていますが。

 
それにしても・・・・
これだけ探査がが行われていないフォボスからサンプルリターン出来れば、ものすごい実績になりますよね。これは楽しみになってきました。2024年が待ち遠しいです!