2年半ほど前にNASAの探査機について、こんな記事を書いたのですが、
その太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が順調に探査を続けており、それどころか、想定もしていなかった写真が撮れてしまったらしいです。この記事です。
ということで、今回はパーカー・ソーラー・プローブが撮影した金星の写真のお話。
探査機が撮った金星の写真にはアフロディーテ大陸が写っていた
2018年8月12日に打ち上げられたNASAの太陽探査機・パーカー・ソーラー・プローブは、これまでの常識から考えてあり得ないぐらい太陽に接近するのですが、一気に近づく訳ではなく、金星軌道と太陽の間を何度も往復しながら、ときどき金星で減速スイングバイを行い、少しずつ太陽の近くを通過する軌道にシフトして行っています。最も太陽に近づくのは2024年12月の予定。
今回話題になっているのは、2020年7月11日にパーカー・ソーラー・プローブが金星で3回目の減速スイングバイしたときに撮影した金星の写真です。それがこれ。
NASA's Parker Solar Probe captures stunning Venus photo during close flyby https://t.co/PIKvkVKEGC pic.twitter.com/NLhF3yVyvw
— SPACE.com (@SPACEdotcom) February 25, 2021
私たちにはよくわかりませんが、この写真は専門家が見ると「とんでもない写真」らしいのです。
金星という星は、星全体が常に分厚い硫酸の雲に覆われており、決して晴れることはありません。すなわち、外から見て、地表が見えることはあり得ないのです。
しかしながら、この写真には金星の中央に大きな黒い影が写っていました。これはなんと、金星に3つある大陸の1つ・アフロディーテ大陸だったのです。
なぜ雲の向こうの大陸が写ってしまったのか?
これは探査機を開発・運用しているNASAですら驚いたということで、狙った成果ではないらしいです。では、どうして分厚い雲に覆われている金星において、地表の大陸が写真に写ってしまったのか?
この写真は探査機パーカー・ソーラー・プローブに搭載されている可視光線用の広視野カメラ「WISPR(Wide-field Imager for Parker Solar Probe)」で撮影されたものなのですが、どうやら想定以上にカメラの感度が良すぎて、可視光線の波長の外側である近赤外線まで捉えてしまったようなのです。
可視光線と赤外線は、波長が違うだけで同じものですからね。普通のデジタル一眼カメラでも赤外線が「写ってしまうといけない」ので、赤外線カットフィルターが搭載されています。
近赤外線は、赤外線の中でも波長が短く、可視光線に近い赤外線です。逆に可視光線から遠い赤外線は遠赤外線と呼ばれています。
【 紫外線 】 波長が短い
↑
【可視光線】
↓
【近赤外線】
【中赤外線】
【遠赤外線】 波長が長い
近赤外線はその物体の温度によって放射量が変わりますので、温度が低い物は黒っぽく写ります。可視光では分厚い雲に阻まれて全く見えない金星の地形ですが、アフロディーテ大陸のある部分は標高が高いため、他の地域より温度が低いため、黒く写ってしまったんですね。
確かに赤外線よる撮影技術では、目には見えない暗闇での写真や、物体の内部の分析に応用されていますが、天体観測にも応用できるということなんですね。
これは素晴らしい成果なんですけど、可視光による写真だと思っていたものに間違いで別な物が写ってしまうというのはどうなんでしょう(^_^;) 今回は気がついたから良いのですが、もし気がつかなければ盛大な勘違いをしてしまった可能性もありますよね。
金星の地図について
さて、今回の件で気になったのは、金星の大陸などの地形のことです。常に分厚い雲に覆われており、地表を見ることができないのですが、「アフロディーテ大陸」という名前がある以上、すでに解析されているということですよね。そこで調べてみたら、すでに金星の地図ができていました。
これはすごいですね。地球の地図のようです。
地図の下の方に年号が書いてあるのですが、「1981」と読めます。なんと40年前?! そんな前にこんな地図ができあがっていたとは驚きです。
で、調べてみたら、1870年代にアメリカでパイオニア・ヴィーナス計画というのが行われており、1978年に打ち上げられたパイオニア・ヴィーナス1号(パイオニア・ヴィーナス・オービター)が金星の周りを周回しながらいろんな観測を行っており、その中の1つのレーダー高度計により、地形の測量が行われたようです。この地図はおそらくそのデータがベースになっていると思われます。
すごいですね。これは感動です。
太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブの旅は続く
さてさて、話が逸れましたが、太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブによる観測はまだまだ始まったばかりです。太陽に最接近するのは2024年の最接近を含め、2025年末まで工程が組まれています。
前人未踏の太陽への大接近・・・。
これからも様々な発見をして私たちを楽しませてくれることと思います。
ワクワクしますね!