今回は冥王星よりも遠くにある太陽系外縁天体のひとつ「2007 OR10」のお話。
しばらく日本国内の話題が続いたので、ちょっと遠くの話題にしてみました。って、遠すぎですけど(笑)
惑星の再定義と準惑星
私が子供の頃は、探査機ボイジャーの観測により太陽系のいろんなことがわかってきた時代だったのですが、「太陽系の惑星は9個」というのが一般常識で、冥王星は太陽系における最果ての場所というイメージがありました。宇宙戦艦ヤマトや銀河鉄道999などの松本零士さんのアニメでも冥王星は重要な星として扱われていましたね。そして、「太陽系に10番目の惑星はあるのか?」という問いは、子供だけではなく大人でも夢を感じる壮大なロマンでした。
そして時は流れ、観測機器が進歩した現代では、冥王星より遠くにも太陽の周りを回っている天体がたくさんある、ということがわかってきました。中でも2003年に発見されたエリスは画期的で、冥王星よりもかなり遠くを回っているものの、調べていくうちに冥王星とほぼ同じ大きさの天体であることがわかりました。
「いよいよ10番目の惑星が誕生するのか?!」と私も興奮していたのですが、2006年に開催された国際天文学連合の会議において、なんと「冥王星も惑星でなくなってしまう」という期待と真逆の結果に愕然としたものです。
なんでも、冥王星やエリスを惑星にするなら、他にも何十個も惑星にしなければならないという状況だったようです。それは仕方ないかもしれませんね・・・。9個だった惑星がいきなり50個になったらロマンもヘッタクレもありません。(ヘッタクレって何だ??)
このとき、冥王星やエリスは、小惑星帯のケレスとともに「準惑星」という新しいカテゴリに分類されています。2020年2月現在、準惑星に分類されている天体は、以下の5つ。
■準惑星一覧(2020年2月現在)
・冥王星 直径2,370km 軌道長半径39.4au
・エリス 直径2,326km 軌道長半径67.8au
・ハウメア 直径1,960×1,518×996km 軌道長半径43.1au
・マケマケ 直径1,502×1,430km 軌道長半径45.5au
・ケレス 直径975×909km 軌道長半径2.77au
※au=天文単位(太陽と地球の距離を1とする単位)
そんな惑星の再定義が話題になった直後である2007年、その星は発見されました。エリスと同じような軌道を持つ太陽系外縁天体「(225088) 2007 OR10」。前振りが長かったですが、今回はこの星のお話です。
意外と大きかった太陽系外縁天体「(225088) 2007 OR10」
太陽系外縁天体(冥王星よりも外側を回っている天体)は、地球から遠くにあるためその大きさを正確に知ることが難しいです。2007年に発見された「(225088) 2007 OR10」についても、それほど大きな天体とは思われていなかったため、すでに大量に発見されていた外縁天体のひとつに過ぎませんでした。
しかし、2016年、ハーシェル宇宙天文台と系外惑星探査衛星・ケプラーの観測結果から、直径が1535kmであるという値が導かれ、注目を集めました。この数字は冥王星よりは小さいものの、すでに準惑星と認定されているマケマケよりも大きいものだったため、いきなり準惑星昇格の有力候補に躍り出たのです。
2007 OR10は軌道長半径が66.95au(100億km)という冥王星よりもはるかに大きな軌道を持ち、547.8年という長い年月をかけて太陽の周りを一周します。
2007 OR10は、かなり歪んだ楕円形の軌道で、近日点を通過するときは冥王星と同じぐらいの距離まで近づくのですが、次回の近日点の通過は西暦2404年ということなので、我々が生きているのは難しそうです(笑)
現在、準惑星候補の天体は何十個もあるのですが、大きさ的にはこの2007 OR10がもっとも大きい(現時点での観測結果だけで判断した場合)ため、準惑星昇格の有力候補と言えます。ただ、準惑星の定義はとても複雑なので、大きければ良いというわけではなさそうです。実際、ハウメアが準惑星になった2008年9月を最後に、もう12年も準惑星が誕生していません。もしかしたらハードルが高いのかもしれませんね。
名前は「Gonggong(ゴンゴン)」になる見込み
(225088) 2007 OR10のこの名前は、発見されたときに便宜上つけられた記号で、固有名ではありません。2020年2月現在、この星は名無しです。そして、現在のところ、「太陽系で名前が付いていない最大の天体」でもあります。準惑星への認定プロセスは煩雑でよくわからないのですが、どうも命名されてないとダメなようです。
そのためかどうかはわかりませんが、2007 OR10の発見者である3名の天文家(Meg Schwamb氏、Mike Brown氏、David Rabinowitz氏)は、2019年に3つの名前の候補を提案し、ウエブサイトで一般に投票を募ったんです。その3つの名前はこれです。
「Gonggong」赤い髪と蛇のような尾を持った中国の水神
「Holle」ゲルマン神話における冬の女神
「Vili」北欧神話におけるアース神族の一柱
で、投票の結果、「Gonggong」が最多得票だったということで、国際天文学連合に正式に提案されています。読み方は「ゴンゴン」かな? それとも「ゴングゴング」かな?
さて、この名前の決定と、準惑星の認定はいつなのか・・・?
注目ですね!!