ここ数ヶ月、夕方の西の空に美しい宵の明星が輝いていますよね。その金星が現在、地球に大接近しています。今回は目の前に迫った金星を普通の一眼レフで撮影してみた、というお話です。
金星は遠くなったり近くなったりする
まずは基本的な話から。金星は太陽系で2番目に太陽に近い惑星で、地球はその次に近い惑星です。それぞれがほぼ同じ平面上を同心円で回っているため、遠くなったり近くなったりします。wikipediaに良い図があったので引用します。
青い線の軌跡を残しているのが地球で、黄色い軌跡が金星です。
金星の太陽からの平均距離は約0.72au。地球と太陽の距離の72%です。従って、金星がもっとも地球に近づくときは0.28auの距離、最も遠いときは1.72auの距離があります。その比、約6倍。すごい距離の差ですよね。
(厳密には公転軌道が少し楕円になっているため、その都度距離は変わりますが、イメージ的にはこれで合ってます。)
肉眼で見ている限り点にしか見えませんので、その距離の差を意識することはないのですが、実際の視直径は6倍近く変化します。遠いときには点にしか写らない金星でも、近ければ大きく写るのではないか、というのが今回の試みの発端です。
次回金星が地球に最接近する(内合となる)のは2020年6月4日なので、あと2週間ちょっとですね。前回の最接近が2018年10月25日ですので、現在は1年8ヶ月に一度しかないレアな状態というわけです。
金星は満ち欠けもある
2020/4/4に金星を撮影した際の記事でも説明しましたが、金星には満ち欠けがあります。地球より内側を回っているため、「金星の夜」の部分が欠けて見えるんですね。お月さんと一緒です。
これをイメージしやすい図がWikipediaにあったので、引用します。(すごいなwikipediaって)
この図の上が北だとすると、金星は右の方から地球に近づいていますので、現在はセンターより少し左側にいるイメージです。従って、地球から見た金星は大部分が「金星の夜」の部分となり、右側のちょっとだけが光っている状況です。
これでわかる通り、金星が地球に近づいてくると、見かけの直径(視直径)は大きくなるのですが、三日月のように光る部分が細くなるので、徐々に暗くなっていきます。
ピークでは-4.5等級ぐらいの明るさなのですが、地球に最接近する(内合となる)6月4日には、-3.7等級まで落ちてしまいます。今回の接近では4月の下旬頃が最も明るかったようです。
普通のデジタル一番レフと望遠レンズで撮影してみる
本当は天体望遠鏡を使って撮影するのが一番ですが、カメラを接続できる望遠鏡を持っていないので、普通の望遠レンズで撮影します。しかも、14年前に発売になった1.5万円ぐらいの安物のレンズです。(でも結構好きなレンズです)
さて、まずはトリミング無しの生データを公開します。
真ん中にちょこんと点があるのですが、わかりますでしょうか? クリックすると6000ピクセルの生データが出てきますので、興味のある方は拡大して見てください。
撮影条件は以下のとおり。
・カメラ CANON EOS9000D
・レンズ AF 70-300mm F/4-5.6 Di LD Macro 1:2 (Model A17)
・解像度 6000×4000 pixel
・撮影条件 ISO400・1/1600s・F8(マニュアルモード)
ホワイトバランス:太陽光
画角:300mm付近
4月に撮影した際は、もう少し新しい18-270mmのレンズを使いましたが、それは手ぶれ補正機能があった方が良いと思ったためです。しかし、高速シャッターでも撮影できることがわかったので、手ぶれ補正機能の無い300mmレンズに変えました。
さて、次はこれのトリミングした画像です。
一辺を1/10にトリミングした画像です。ピクセル等倍。3000mmの望遠レンズ相当の画角になります。ここまで拡大すると金星の形がわかりますね。予想通り、三日月型になっています。月齢で例えると「2」ぐらいでしょうか。(もちろん金星なので月齢はありません)
さらに見やすい画像にしてみます。
元画像は同じですが、こちらは一辺を1/20にトリミングして、さらに見やすくするために一辺を2倍に拡大しています。画角としては6000mmの望遠相当になりますが、ピクセルは倍になりますので、少しボヤッとした画像になってしまっていますね。
それでも、十分金星の輪郭を確認できます。キレイな三日月状になっていますね。特殊な機材を使わずに、一般的な一眼レフと望遠レンズでここまで金星をリアルに撮影できるるんですね。すごい収穫です。
金星撮影のコツ
金星は、月、木星と並んでもっとも写真撮影のしやすい天体です。でも、最初はうまく撮影できませんでした。今回は5回目ぐらいなので、だいぶ要領が良くなったんです。
何回も失敗した経験を踏まえ、金星など身近な天体を撮影するコツをまとめておきますね。
(1)撮影はカメラのマニュアルモードを使うこと
カメラをマニュアルモードにして、絞り、シャッター速度は自分で設定しましょう。Pモードなどの自動露出+露出補正では思うように撮れません。
(2)シャッター速度は思ったより速めに設定すること
星の写真ということで、シャッタ速度を遅くしてしまいそうですが、金星や月、木星などは意外と明るいです。露光時間が長すぎると、明るく写りすぎて、細部が白飛びしてしまうので注意してください。接近中の金星は1/1600sで十分でした。月も私は1/320~1/1000sぐらいで撮影しています。レンズがショボいので、F値もF7.1とかF8など、絞り気味です。それでもしっかりと撮影できます。
(3)条件を少しずつ変えてたくさん撮っておくこと
なかなか撮り直すのは大変ですので、いろんな条件(シャッター速度、F値、ISO感度)でたくさん撮影しておきましょう。F値の設定もレンズによっては得意な値が違うので、いろいろ撮っておくと良いです。今回使ったレンズはF7.1~8ぐらいならシャキッと撮れるのですが、それ以下で撮ると、ちょっとユルい写真になってしまいます。
こんな感じです。
参考にしてください~
金星の撮影シーズンはまもなく終わる(太陽と一緒に地平線に沈んでしまうようになる)ので、これからは木星や土星などの撮影をやってみようと思います。
あとは、春の大三角形や夏の大三角形などを撮影するのも面白いですね。
天体写真は勉強中なので、いろいろチャレンジしたいと思います!