今回はカメラのオールドレンズのお話。
50年以上も前に発売になった「Pentax Super-Takumar 55mm F1.8」を現代のデジタル一眼レフに装着して使ってみた感想と作例を紹介します。
Super-Takumarでオールドレンズの世界へ
去年の夏の話、インタスグラムで味のあるとても良い雰囲気の写真を見かけたので、どんな機材で撮影しているのか確認したのですが、聞き慣れない名前のレンズでした。
「Pentax Super-Takumar 55mm F1.8」
へえ、ペンタックスのカメラにはそういうレンズがあるんだなと、と思い、スルーしようと思ったら、なんとカメラがCANONのEOS Kissシリーズだったという。
「何それどういうこと? マウントアダプタを使ってまで使用するレンズっていったい・・・」
と思って調べてみたら、これはなんと50年以上も前に発売になったレンズ、いわゆる「オールドレンズ」というヤツでした。
「Pentax Super-Takumar 55mm F1.8」は、数あるオールドレンズの中でも入門的存在で、とても味がある写真が撮れる素晴らしいレンズなのにもかかわらず、当時大量に出回っていたため、中古品が安価に手に入るとのこと。そして、マウントアダプタを装着すればCANONのEOSシリーズでも問題なく使用できるとのことでした。
このレンズのいろいろな方の作例を見ましたが、レトロ感のある良い雰囲気の写真ばかりだったので、私も挑戦したく思い、調達しました。
Amazonでは、6,000円ぐらいから出品されてます。(2022年2月現在)
私は税込み7,000円ぐらいで買いましたが、中古なので出品者の画像と価格を見て選ぶことになります。レビューとかを見ると、この部分は当たり外れがあるような(似た名前の別のレンズが届く例がある)感じですが、私のは特に問題ないものでした。
このレンズはM42というマウントで、このままでは現行の一眼レフに付けることはできません。でも便利なもので各社からマウントアダプタが出ておりますので、適当に安いのを探して一緒に購入しました。M42からEOSシリーズ用のEFマウントに変換するアダプタです。1500円ぐらいです。
かくして、私もオールドレンズの世界に足を踏み入れたのです。
Pentax Super-Takumar 55mm F1.8の初期型・前期型・後期型の違いと見分け方
Super-Takumar 55mm F1.8は、年代によって少し仕様が違い、写りも多少違うようなので、注意が必要です。同じ「Super-Takumar 55mm F1.8」でも、1962年に発売になった「初期型」、1963年に発売になった「前期型」、1965年に発売になった「後期型」に分類されます。
◆初期型の特徴
・シリーズ前作である「Auto-Takumar 55mm F1.8 後期型」とまったく同じ製品。名前が変わっただけ。
・1年しか販売していなかったため、中古品の流通量はわずか
◆前期型の特徴
・初期型から銘板以外大きく変わった
・絞りリングの回転方向が変わった
・フォーカスリングの滑り止め加工が変わった
◆後期型の特徴
・放射性同位元素トリウムを含有している「アトムレンズ」である
・もちろん人体に害は無い
・初期型、前期型と比べて写りが良い
・古くなるとレンズガラスが黄色に変色する → 独特の描写になる
・大量に中古品が出回っている
なんでトリウムなんかを入れるんだと思ったのですが、当時、放射能であることは知られていたものの、写りが良くなるということで各社からトリウム入りのアトムレンズが発売になったそうです。
さて、これらの見分け方ですが、これが意外と簡単なのです。
見分ける方法は、絞りリングの回す方向と前面にある製造番号の位置です。
◆絞りリングの回す方向
初期型とそれ以外では絞りリングの回す方向が逆なんだそうです。絞りリングに書いてある、「16」の文字が右端にあれば初期型、左端にあれば前期型か後期型です。
◆前面にある製造番号の位置
後期型とそれ以外では前面にある製造番号の位置が違うそうです。「Asahi」の前に製造番号があれば後期型、「Super-Takumar」の前に製造番号があれば初期型か前期型。
ということで、私が購入したのは「後期型」ということになります。
Pentax Super-Takumar 55mm F1.8のスペック
Super-Takumar 55mm F1.8の諸元は以下の通り。
焦点距離:55mm(単焦点)
最短撮影距離: 0.45m
絞り開放: F1.8
レンズ構成: 5群6枚
絞り羽根枚数: 6枚
フィルター径: 49mm
マウント: M42
最大径×長さ: 59×38mm
重量: 初期型195.5g、前期型・後期型205g
カメラの設定と自動露出について
このSuper-Takumarのようなオールドレンズを現代の一眼カメラに装着して使用する場合、若干の設定が必要になることがあるので、自分への備忘録をかねて書き留めておきます。
「レンズなしレリーズ」の設定が必要になることがある
私が使っているカメラ「CANON EOS 9000D」「CANON EOS Kiss X5」では問題なかったのですが、オールドレンズを装着するとカメラ本体が「あ、レンズが付いてない」と判断してシャッターが切れなくなる機種があるようです。まあ、オールドレンズには一切の電子接点が存在しないので当然ですよね。
その場合は、カメラ側の設定で「レンズなしレリーズ」の設定を「する」なり「可」なりにする必要があります。
EOS 9000DとKissシリーズは、レンズが付いてなくても普通にシャッターが切れるようです(笑)
オートフォーカスは使えません
当たり前の話ですが、「オートフォーカス」という概念がなかった時代のレンズですので、EOSに付けてもオートフォーカスは使えません。ピントリングをカメラ側から操作する機構自体が付いてないですからね。頑張ってマニュアルフォーカスしましょう。(老眼にはキツいです)
絞りはレンズの「マニュアル」に設定し絞りリングで
オートフォーカスは存在しない時代のレンズですが、自動露出は存在し、カメラ側から絞りを変えることができる機構は付いています。ですが、それは当時の対応するカメラ(例えばPENTAX SVなど)を使用した場合の話。レンズのカメラ側に付いているピンを押したり引っ込めたりすることで、絞りを操作していたようです。
当然、現代のカメラにはそんな機構は付いておりませんので、自動絞りは使えません。レンズについている絞り切替レバーを「マニュアル(M)」に設定してください。「オート(A)」に設定すると、常に絞り開放になってしまいます。(私は最初、それをやってしまいました)
絞りの設定についてはレンズについてるダイヤルで合わせることになります。F1.8~16の範囲で設定できます。
オールドレンズでも自動露出は使える
露出については、カメラ側を「絞り優先AEモード」(EOSなら「Av」)にすることで自動露出になるので心配いりません。これには驚きました。「自動露出は使えない」というウワサも目にしたので不安だったのですが、ちゃんと絞りに合わせてシャッター速度が調整されます。
すごいですよね、EOS。電子接点がないので、カメラ側では「いま絞りがなんなのか」わからないはずですし、カメラの絞り表示は常に「F00」になっているのですが、レンズの絞りリングを回すたびに、都度シャッター速度が変わります。
要するにEOSは絞り値ではなく、レンズを通して実際に入ってくる光の量でシャッター速度を調整しているってことですね。そう考えると当たり前か。明るさを適切に調整する機能が「自動露出」ですもんね(笑)
Pentax Super-Takumar 55mm F1.8の作例
感想・レビュー
最後に感想とレビューを。
初めてオールドレンズというものを使いましたが、これは面白いです。これからもどんどん使っていこうと思います。感想をまとめると、以下のようになります。
・EOS9000Dのファインダーだとマニュアルフォーカスが厳しい。MF用のスプリットイメージが欲しいところ。
・同じ被写体でも現代のレンズと違う写りになるので撮影していて楽しい。
・明るいレンズなので汎用性が高い。
・コンパクトなので、お散歩レンズに最適。
・被写界深度が浅いので、幻想的なボケ写真が撮れる。
・撮った写真が映画のワンシーンのようになる。
・上手く活用すれば写真の表現の幅が広がると思う。
私はまだ使いこなせておりませんが、独特なボケ、フレア、ゴーストなどを上手く活用することで、いろんな表現が可能になると思います。ピンボケ写真も多いのですが、それも含めて撮影というものが楽しく感じます。
たった7,000円のレンズで、これだけ写せて楽しめるというは、かなりお得な買い物ですねー。
新しい世界をありがとう!
※この記事は別ブログで2022年2月に投稿した記事の転載になります。