小惑星ベンヌ、2135年に地球に大接近。衝突回避のため軌道を変える「HAMMER」計画とは?!

2022年6月11日

探査機オサイリス・レックスにより高度24kmから撮影されたベンヌ。NASA/Goddard/University of Arizona, Public domain, via Wikimedia Commons

 
昔、映画「アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」を見て、作中では無事だったものの、地球に接近する小惑星の恐ろしさや人類の非力さに愕然としたものですが、2021年現在にあっても、その脅威は変わらず存在しています。

今日、こんなニュースを発見しました。

 
地球近傍を公転する小惑星ベンヌが、(天文学的には)割と高い確率で地球に衝突しそうだという話です。

それは2135年の話であり、確率も1750分の1なので、それほど心配するような話ではありませんが、地球近傍には同じような小惑星が無数にあり、しかもその大部分は発見されておりません。

もし、1750分の1の確率で地球に衝突する小惑星が1000個あったら?



そう考えるととても恐ろしいですね。
全然安心できる確率ではありません。

ただ、この記事には、ひとつ面白いことが書いてありました。

今年の11月からはベンヌそのものの軌道を変えるためのミッションがスタートする運びになっている。

はい?!

な、なにそれ!!!(゚▽゚;

 

小惑星の軌道を変える「HAMMER」計画とは?

ということで、「小惑星の軌道を変える計画」というのを調べてみました。将来的にはそういうものが出来ると思ってはいたのですが、それが今年からスタートするような段階になっているとは驚きです。まるでSFです。

あまりこのミッションについての記事がなかったのですが、この記事が一番詳しく書いてありました。

 
そのミッションの名前は「HAMMER」。おそらくカナヅチである「ハンマー」も掛けている言葉だと思いますが、「Hypervelocity Asteroid Mitigation Mission for Emergency Response vehicle」の頭文字をとったもののようです。

映画「アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」では、掘削機のようなもので爆弾を小惑星の地下に埋め、爆発・四散させるという方法で地球の危機を回避しましたが(ディープ・インパクトは失敗して別の方法を選択しますが)、このHAMMER計画はもっとシンプルです。重量のあるロケットをたくさんぶつけて小惑星の軌道を変えてしまおうというものです。

なるほど、これぐらいシンプルな方が成功率は高そうです。爆弾を埋めるとかだと、掘削機が途中で止まったらとか、爆弾が爆発しなかったらとか、いろんな不安要素があります。

宇宙空間では空気抵抗も摩擦力もありませんから、物体と物体が衝突したら、ほぼ間違いなく物理法則通りの挙動が得られます。要するに、計算できるということですね。

小惑星の重さに比べてロケットの重さは圧倒的に小さいので、イメージ的にはボーリングの球にパチンコ玉をぶつけるような感じですね。1個だけならあまり効果はありませんが、数があれば問題ありません。さらに、早い段階で実行すれば、ほんのちょっと軌道を変えるだけで、十分に危険が回避できます。

ただ、問題はどれだけ猶予期間があるか、ってことです。

この記事には、

ベンヌ級の大きさの小惑星の場合、ミッションの実行決定から、宇宙機の建造、計画立案、小惑星に到達するまでの飛行時間など合わせると最低でも7.4年の時間が必要であると見積もられており、、、

とあります。なんと、7.4年も必要?! これは厳しいですね・・・

先述の通り、早く実施できれば、ちょっと軌道を変更するだけでよいので、ロケットの機数も少なくて済みます。ベンヌと同じぐらいの大きさの小惑星の場合、衝突の25年前に計画を開始すれば7~11機で済むらしいですが、10年前からのスタートだと34~53機が必要になるとのことです。

いやいやいや、結構シビアです。

でも、こういう脅威に対する対抗手段がある、ということがまず重要ですよね。
これからも研究を重ねて、確実性の高い対抗策を作り上げて欲しいですね。

 



小惑星ベンヌとは?

さて、順番がおかしいですが、ここで小惑星ベンヌについて、説明したいと思います。

小惑星ベンヌの自転。NASA/Goddard/University of Arizona, Public domain, via Wikimedia Commons

 
ベンヌは1999年に発見された地球近傍小惑星です。軌道長半径は1.126auということで、地球より少し大きな軌道で太陽の周りを回っています。

上の写真のようにそろばんの珠のような形をしており、自転周期4.288時間という結構速いスピードで自転しています。その高速自転の遠心力のせいで、赤道部分が盛り上がって、四角い輪郭になっているようです。

平均直径は0.560kmということで、数ある小惑星の中では大きい方です。これが地球に衝突したら、地球が壊れることはないにしても、巨大なクレーターが出来る大きさで、もし落ちどころが悪かったら、都市ひとつが壊滅するぐらいの破壊力があるそうです。

軌道が地球に近いことから、約6年に1回地球に接近。2000年代はそれほど危険はないようですが、2135年には月と地球の距離の半分のところを通過、さらに2182年にはもっと近いところを通過するようです。

この小惑星ベンヌが地球に衝突する確率は、知られている限りのどの天体よりも際立って高い確率なんだそうです。うーむ。これはやっぱり、早くHAMMERで軌道を変えてもらわないと恐ろしいですね。

 

NASAの探査機オサイリス・レックスによるサンプルリターン

そうそう。
なんか「ベンヌ」という小惑星の名前を聞いたことがあるなと思ったのですが、これ、NASA版の「はやぶさ」、探査機オサイリス・レックスのターゲットになった小惑星なんですね。

探査機オサイリス・レックスは2016年に打ち上げられ、2018年にベンヌに到着。そして2020年10月にサンプルを採取して、現在地球に向かっています。

そのサンプルが地球に到着するのも楽しみですが、すでにいろんな調査結果が出ており、ベンヌの表面に四大小惑星のひとつであるベスタの「欠片」らしきものが存在しているという報告もあります。

面白いですね~。小惑星ベンヌとベスタの間にいったい何があったのか? 想像するとワクワクしますね!

 
そんな感じで・・・

なんか今回はSF映画のようなお話だったのですが、そんな危険があること、そしてそれを回避するための計画があることを、私たちは知っておくべきだと思います。

ガンバレ! 地球防衛軍!(?)

 
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