北海道で七夕が8月7日である理由とローソク出せ(ローソクもらい)の由来

2022年8月10日

2020年夏に撮影した星空。カシオペア座(上)とアンドロメダ座(下)が見える

 

 ローソク出~せ~だ~せ~よ~

  出~さ~ないと~かっちゃくぞ~

   お~ま~け~に食いつくぞ

 
私にとって、七夕と言えばこれです。

小さい頃から慣れ親しんだ歌。小さい頃は「ローソク出せ」と呼んでいたけど、Wikipediaを見ると「ローソクもらい」という言うらしい。

8月7日。七夕の日。子供たちは数人一組で近所の家をまわり、玄関の前でこの歌を歌います。すると、その家の人はお菓子を出してくれます。たまに本当にローソクをくれるおばあちゃんとかが居て、しらけたりするのですが(笑)

私は道北の旭川市で育ち、七夕はこうやって過ごしました。

時は流れ、大学に行って、この歌を誰も知らないことに驚きました。北海道外の人はもちろん、北海道の人でも知らない人が結構いました。

今日は7月7日。今回は北海道の七夕についてお話しますね。



  

小さい頃から七夕は8月7日だった

私は子供の頃、北海道の帯広市と旭川市で過ごしたのですが、物心が付いてからずっと七夕は8月7日だったので、そういうものだと思っていました。テレビとかを見ていると、7月7日に七夕の話題が出てくるのですが、

「バカだなあ~、七夕は8月7日なのにみんな間違ってるよ」

と割と真剣に思っていたのですから思い込みというのは恐ろしいですね。

七夕のイベントを8月7日にやるのは北海道だけだということに気がついたには小学校高学年になってからでした。

 

そもそも七夕って何?

北海道の七夕はなぜ8月7日なのだろう、という話の前に、そもそも七夕ってなんなんだろう、というところから始めましょう。

Wikipediaによれば、

七夕は、中国・日本・韓国・台湾・ベトナムなどにおける節供・節日の一つ。五節句の一つにも数えられる。星祭り(ほしまつり)という。

そう、節句のひとつなんですね。3月3日や5月5日と横並びと考えて良さそうです。でも、その由来となるとこれが難しいのです。

有名なのは織姫と彦星の物語。神様によって離ればなれにされてしまった愛する2人が、年に一度、天の川渡って会うことができる日、それが七夕です。

しかしながら、歴史をさかのぼるとこの物語については由来がハッキリしません。昔の中国の書物に似たような人物や7月7日に関する記述があるので、中国から伝わって来たのは間違いないでしょうけど、長い年月の間に、いろいろ変化して今の形になったと思われます。

江戸時代から明治時代にかけては、お盆が旧暦7月15日前後だったことから、「お盆の始まり」という意味合いで、全国各地で「七夕祭り」を行っていたようです。

「仙台七夕まつり」は現代でも大盛況ですし、有名な青森の「ねぶた祭」も、この旧暦7月7日の七夕祭りが原型だというので、その規模が分かりますね。

 

そして明治5年、明治改暦があった

そういえば先日廃藩置県の記事を書きましたが、同じような時期ですね。明治維新、いろいろ変わりすぎ。

明治5年、そんな七夕の歴史に大きな影響を与える出来事が起こります。「明治改暦」。日本におけるグレゴリオ暦導入です。

よく考えるとすごいですよ、これ。グレゴリオ暦1873年1月1日に当たる明治5年12月3日を、明治6年1月1日としてしまったのです! なんと12月4日から12月31日がぶっ飛んでしまいました! これは時間を消し飛ばすスタンドを持つディアボロ(ジョジョ第5部のラスボス)もびっくりです! まだ1ヶ月以上あると思っていたセンター試験が目の前になるとか悪夢以外のナニモノでもないですね!

まあ、要するにこれが「旧暦」が「新暦」に変わった瞬間です。変わったというか、それまでの暦が「旧暦」になってしまったんですね。1ヶ月も「ズレ」てしまったわけです。

そのとき、「今まで7月7日にやっていた七夕祭り、今年からどうする?」となったわけです。誰が仕切っていたのかはわかりませんが、全国で統一すれば良かったものを、国が「新暦でも旧暦でも地域に任せる」と言ったため、一部の地域では旧暦の7月7日の近くである8月7日になったようです。

 

北海道でも7月7日が七夕の地域がある

というわけで、七夕が7月7日なのか8月7日なのかは、それぞれの地域が自分たちで決めたことなんですね。

当時、北海道にどれぐらいの人が住んでいたかはわかりませんが、北海道の大部分は8月7日を選択したようです。でもすべてではありません。道南・函館周辺の町や道東・根室市では、7月7日に七夕をやっているようです。

北海道以外にも8月7日を選択した地域があるようで、先程話題にした仙台七夕まつりも8月に開催されています。

歴史って面白いですね。

 



ローソク出せ(ローソクもらい)の由来

さて、話を冒頭に戻しましょう。
北海道の一部の地域には、七夕の夜に子どもたちが、

「ローソク出〜せ〜 出〜せ〜よ〜」

と歌いながら近所をまわって、お菓子を集めるという風習があります。

わらべ歌を彷彿させるこの歌の旋律は独特なものがあり、一度聴くと耳から離れません。

YOUTUBEに音源があったのでシェアしますね。

 
基本的には、冒頭で書いたとおり、

「ローソク出ーせー出ーせーよー 出ーさーないとー かっちゃくぞー おーまーけーにー喰い付くぞー」

という感じなのですが、地域によって少しずつ歌詞が違うようで、「かっちゃくぞ」だったり「ひっかくぞ」だったり「食いつくぞ」だったり「噛みつくぞ」だったりするようです。

函館に至っては、まったく別のものになっていて、

「竹に短冊七夕祭り 大いに祝おう ローソク一本頂戴なー」

という歌らしいです。

あくまでも地域に密着した風習なので、私と同じ市の出身でも、まったく知らない人もいましたし、不思議なものだなあと感じました。

さて、それではこのローソクもらいという風習はどこから来たのか?

実はこれもハッキリとはわかっておりません。しかし、青森のねぶた祭りが起源になっているのではないか、という説があります。

現在のねぶた祭りではローソク出せとかやっていないのですが、ねぶた祭りでは大量のローソクを使用することから、住民からローソクの寄付を募ってた時代があるようです。その風習が北海道に渡ってローソクもらいになったとか。

北海道に渡った和人の中には青森の方も多かったでしょうから、筋はとおりますね。

ねぶた祭りは渡ってないのに、ローソクもらいの風習だけが津軽海峡を渡って北海道にやってきた………。そこにはどんなドラマがあったんでしょうね? とてもロマンを感じます。

今年はコロナでローソク出せができないかもしれませんが、こういうのはずっと続いてほしいですね。

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