真夏の知床に観光に行くと、ものすごい観光客の数で秘境に来た感じがまったくしないのですが、今回紹介するフレペの滝は、観光シーズンでもそれほど混むことはありません。何故かというと、駐車場にクルマを駐めてから、20分ぐらい歩かなければならないからなんです。
フレペの滝。別名「乙女の涙」。
滝にもいろんなタイプがありますが、この滝は少々風変わりで、私は他にこのような滝の事例を知りません。まず1つ目の特徴は、ロケーション。湾状になった断崖絶壁の最奥部に、その滝はあります。
断崖の高さは約100m。ものすごい高さある湾なので、上から覗くと足がすくみます。高所恐怖症の方にはオススメできない観光スポットですね。ちなみに、この滝は下から眺めようと思うと、船に乗るしかありません。知床観光船に乗れば近くに寄ってくれるはずです。
次の特徴は、「川がない」ということです。たいていの滝は川があって、その流水が崖から落ちていくのですが、フレペの滝は川ではありません。断崖の隙間から染み出てくる地下水が落ちていく滝なのです。
そのため水量が少なく、ホロホロと流れ落ちるさまが涙に似ていることから、地元の人たちはこう呼んでいます。
「乙女の涙」
と。
本当に水量が少ないため、海からの風が強い日は、湾を駆け上がる上昇気流に押し戻されて、滝の水が下まで到達できないことがあります。昔、観光船の中から、そのように空に溶けてゆく飛沫を見て、本当に涙みたいだと私は思ったものです。
2006年9月6日。この日は、地上から見に行こうと、知床ネイチャーセンターにクルマを置き、名物のコケモモソフトクリームを食べながら(結構美味しい)、遊歩道を20分歩いてフレペの滝を目指しました。
そして、断崖絶壁の上からフレペの滝を見ると、なんと虹が架かっていたのです。
前は風にあおられて空に溶けてゆく乙女の涙、
そして、今回は虹が架かった乙女の涙。
知床は何度行っても、毎回違う顔を見せてくれますね。