惑星テイアとは? 地球に衝突してその破片が月となったジャイアントインパクト説の仮説上の惑星

惑星テイアが地球に衝突する瞬間のイメージ画像。※Wikipediaより引用

 
「テイア」という惑星をご存じでしょうか?
英語で書くと「Theia」です。「ティア」ではありません。「て・い・あ」です。

2006年に冥王星が惑星でなくなって以来、太陽系の惑星は8個しかありません。

水星・金星・地球・火星・木星・天王星・海王星

この8つです。

おそらく海王星の外側にもうひとつ結構大きな惑星が存在するはずなのですが、現時点ではまだ発見されていません。付近の小惑星の軌道の歪さから推測されているだけです。

では、テイアとはいったいどこにある惑星なのでしょう?

 

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惑星ティア。46億年前に存在したと言われている仮説上の天体

少し話が逸れますが、地球には「ジャイアント・インパクト説」という仮説が存在します。

約46年前、原始の地球に大きな天体が衝突し、その破片が宇宙に散らばったという仮説です。もちろん、その頃の地球には生物が存在していなかったと思われるので、絶滅とかそういう悲劇はなかったはずですが、地球に大きな変化がもたらされました。

それは、月の誕生です。

地球に天体が衝突し、破片が飛び散りましたが、その大部分は地球の引力に捕らえられ、地球を周回する軌道に乗ったと思われます。その破片は地球の周りをぐるぐる回りながら、一時的に土星の輪のような状態となりましたが、やがて万有引力によって互いに引き寄せられ、ひとつの天体となりました。

それが「月」です。

ところでみなさん、月の大きさをご存じでしょうか?
直径が約3,474km。これは地球の直径の1/4以上の大きさです。

母天体に対する衛星の大きさの比率がこんなに大きいのは、太陽系の惑星の中では月だけです。(準惑星を含めると、冥王星の衛星カロンはもっと大きい。1/2以上)

地球に衝突した天体の「一部」が破片として宇宙に散らばり、
散らばった破片の「一部」が集まってできた月が、
直径で地球の1/4以上の大きさがあるわけです。

じゃあ最初に地球にぶつかってきた天体はどんだけ大きいんだ?!
という話になります。

計算上、その天体は火星とほぼ同じぐらいのサイズだったと考えられております。火星の直径は6,794 km。地球のほぼ半分です。

現在でも、地球の近くには塵や小惑星がビュンビュン飛んでいます。一部は大気圏に突入して火球になったり、地表まで届いて隕石になったりしています。でも、そんな大きな天体はもはや塵でも小惑星もありません。惑星です。

そう、ジャイアント・インパクト説において、地球に衝突して月を形成した天体。

それが、「テイア」と呼ばれる惑星です。

ギリシャ神話において、月の女神はセレーネ(Selene)ですが、セレーネの母親はテイア(Theia)という女神です。この惑星の名前はここからもらったんですね。

月の女神の母・テイア。
なんてロマンチックなのでしょうか。

 

惑星テイアはどこからやってきた?

46億年前に地球に衝突して月を形成した惑星テイア。それは一体どこから来たのでしょう?

あくまでも仮説の話であり、実際にそんな惑星があったかどうかもわからないのに、どこから来たかまでを突き止めるのは本当に憶測の推測にしかなりません。でも、仮説としてある程度は考えられています。

まず、そんな大きな天体が高速で地球にぶつかってきたら、地球はひとたまりもありません。したがって、もともと近くにあった天体がなんらかの拍子に引力のバランスが崩れて、ゆっくりと地球に接近したと推測されます。

また、現在、月の岩石の組成はかなり分析されていますが、地球とあまり変わらない組成であることがわかっています。もしテイアが火星よりも遠くにいた天体なら、地球と似ても似つかない岩石の星であったと推測されます。このことからも、テイアは地球にすぐ側にあった天体だと考えられています。

ただ、天体の位置というのはとてもデリケートで、大きな惑星の側で、別の大きな天体が存在できる場所は限られています。それ以外では引力のバランスが保てないからですね。

一般に惑星の軌道付近で引力のバランスがとれる場所を「ラグランジュ点」と呼ばれており、全部で5つあります。

ラグランジュ点のイメージ図。黄色が母天体、薄紫が惑星、L1~L5がラグランジュ点。※Wikipediaより引用

この図のL1~L5がラグランジュ点で、太陽(黄色)と地球(薄紫)と引力的にバランスがとれているポイントです。

原始の太陽系ではこのL4もしくはL5の位置に惑星テイアが存在していたと推測されています。

こんな近くに火星サイズの天体があったら、さぞ明るく夜空に輝いていたでしょうね。でも、その位置に惑星テイアがあったのはほんのわずかな期間と思われます。

何らかの原因で引力のバランスが崩れ、テイアはカオス的な軌道をとりながら地球に近づいていきます。そして正面衝突ではなく、こするように斜めから地球に衝突。

こんなイメージです。

このイメージアニメでは、あっという間に月が形成されていますが、現在のような球形の月が形成されるまでに必要だった期間は、1年から100年と言われています。

 

ロマンである

ラグランジェ点に浮かんでいた惑星テイア。
徐々に地球に近づいてくる惑星テイア。
衝突後、土星の輪のように地球の周りを回っていた破片。

仮説ではありますが、なんともロマンがあって、この目で見てみたいと思ってしまいます。まあ、実際に火星サイズの天体が地球に迫ってきたがら恐怖以外のなにものでもありませんし、そんなことになったら間違いなく生物は絶滅するのですが。

なお、衝突で宇宙空間に飛び散った破片以外にもテイアの一部(というか大部分)は地球に残っているはずです。また、一度宇宙に散った破片も、地球の重力によって、地表に戻ってきたと推測されます。それらはいったどこにあるのか?

先日、それに関してこんなニュースがありましたので、興味のある方は読んでみてください。

地球に衝突した惑星「テイア」の残骸発見か、月の形成に寄与 新研究
数十億年前に地球が形成される際、太古の惑星が衝突して破片が飛び散り、その破片が合体して現在の夜空を彩る月になった――。この点について大方の科学者の見解は一致している。 - (1/2)

 
はるか46億年前の天体イベント。
夢の中なら見られるかな?
 

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