さそり座AR星。強力な電磁波を放射しながら灯台のように高速自転する不思議な連星

さそり座AR星のイメージ図。Wikipediaより引用(クレジット:ESO

今回はさそり座にあるとある恒星のお話。
その恒星は指向性のある電磁波を放射しながらものすごい勢いで灯台のように回転しているという珍しい星です。

私が小学生の頃、「銀河鉄道999」という松本零士さんの漫画があり、そこに登場する奇想天外で不思議な天体にロマンを感じておりましたが、現実の宇宙にも負けないぐらい奇妙で不思議な天体があるようです。

 

さそり座AR星は高速で明滅する連星だった

地球からさそり座の方向に380光年離れた場所に「さそり座AR星」という恒星があります。天文学的には地球に近い部類の恒星ですが、あまり大きな恒星ではないため、視等級が約14.1~14.6等級と、肉眼で見えないどころか、天体望遠鏡でも観測が難しい天体です。


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このさそり座AR星は、3.56時間周期で明るさが変化する「変光星」であることが知られておりました。変光星は、明るさが変わる原因によっていろいろと分類されていますが、このさそり座AR星は、恒星の表面が周期的に膨張・収縮することにより変光する「たて座δ型変光星」に分類されています。

しかしこの星は、近年の観測により、単一の恒星ではなく、2つの恒星から成る連星であること、そして、3.56時間周期の変光だけではなく、1.97分周期という恐ろしいほど速い速度でも変光していることが判明しました。

 

さそり座AR星は伴星より主星が小さい珍しい連星

連星自体は珍しいものではなく、以前このブログで紹介したおとめ座のスピカのように5連星などというとんでもない連星も存在しています。なので、このさそり座AR星が2つの星の連星だったとしても驚くことではないのですが、その組み合わせに大きな特徴があるのです。

さそり座AR星の主星(連星の中心となる天体)は、その直径が太陽系の太陽の1/100という地球と同じぐらいのサイズの白色矮星。そして、その伴星は、なんと太陽の約1/3の直径をもつ赤色矮星なのです。主星よりも伴星の方が遥かに大きいという。

みなさん、想像してみてください。地球サイズの小さな白い恒星の周りを、直径が30倍以上ある赤く燃える大きな恒星がぐるぐる回っているのです。ものすごい違和感がありますよね。普通は逆です。普通は大きい星の方が重いので、回転の重心は重たい星の方に寄るはずなんです。

でも、この連星は違います。大きな伴星よりも小さい主星の方が重たいのです。この主星の白色矮星、サイズは太陽の1/100なのですが、密度が高く、重さはなんと太陽と同じぐらいあるのです。

ここまででも相当異様な感じの連星なのですが、本当に奇妙なのはここからです。

 

主星は灯台のように電磁波を放射しながら高速回転しているパルサーだった

ここまでの話では、1.97分周期で変光していることは説明出来ていません。なぜこの連星はそんな高速で明るさが変化しているのか?


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そのカラクリを理解するためには、この動画を見るのが一番でしょう。

 
すごいです。
ものすごいインパクトのある動画です。
事実は小説よりも奇なりと言いますが、今まで見たり読んだりしたSFの中にも、こんな奇妙な星は出てきませんでした。この動画、夢に出てきそう。

この動画で、白く光っている小さい星がさそり座AR星の主星で、太陽のように赤く燃えている大きな星がさそり座AR星の伴星です。

主星の白色矮星は灯台のように電磁波を放射しながら回転(自転)しており、その電磁波が、周期的に伴星の赤色矮星に当たっています。そして、強力な電磁波を照射された赤色矮星はその瞬間だけ明るさを増しています。

この現象が1.97分に1回起こっているんですね。これが1.97分周期の変光の正体です。どんだけ速く自転してるんだ・・・。これ、実際に目の前に見てみたいです(笑)

このように、電磁波などを放射しながら自転している天体はたくさんあって、それらは一般に「パルサー」と呼ばれているのですが、このさそり座AR星のように、白色矮星がパルサーとなっている事例は現在のところ他にないそうですし、しかも伴星を照射してるなんてレアものにもほどがありますね。

今回は、そんなレアものの星のお話でした。
パルサーについてもなかなか興味深いので、また別の機会にお話ししたいと思います。
 


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