前回の記事「スピカ(前編)ワガママな歳差・スピカ」の続きです。前回は初音ミクの楽曲とUGCの話が中心でしたが、今回はスピカの星としての天文学的な特性のお話をしたいと思います。
スピカ・・・ SPICA・・・。
みなさん、星・スピカにはどんなイメージがありますか? 私はなんとなく光り輝いているものを想像します。「スピカ」という音のイメージですね。実際、「SPICA」という言葉は「穂先」という解釈があるらしいです。上のおとめ座のイメージ図で、スピカのある部分が麦穂になっていますよね。
スピカはおとめ座で最も明るいα星で、等級0.97、全天に21個ある一等星のひとつです。地球からの距離は約250光年。以前紹介した小マゼラン星雲は19万光年だったので、それより遥かに近いですね。1/800ぐらいの距離です。
このスピカ、日本では「真珠星(しんじゅぼし)」という和名もあったのですが、これは戦時中に軍隊から依頼を受けて星の和名の収集研究の第一人者・野尻抱影氏が付けた名前です。現在ではほとんど失われた名前ですね。
さて、ここからが本題。このようにスピカは光り輝いていたり、麦穂だったり、真珠だったり美しいイメージがあるのですが、実は強烈な個性をもった恒星なんです。まず、スピカは古くから、ふたつの星から成り立つ「連星」であることが知られていました。そうです。スピカはひとつではないのです。でも、その位置関係が異常なんです。
Wikipediaによると、スピカの物理的性質は、以下のように書かれています。
・半径 7.8/4.0 R☉
・質量 11/7 M☉
R☉というのは、地球のある太陽系の太陽の半径を1とした大きさの単位、M☉というのは、同じく太陽の質量を1とした重さの単位です。で、数字が2個あるのは、連星なので、主星と伴星のデータですね。
要するに、スピカの主星は太陽の7.8倍の半径を持ち、11倍の質量を持っている。伴星の方は太陽の4倍の半径を持ち、7倍の質量を持っているということです。そして、この主星と伴星の距離は、なんと、
0.12au(天文単位)
しか離れていないのです。auというのは地球と太陽の距離を1とした距離の単位です。要するに、
太陽の約8倍の大きさの星と約4倍の大きさの星が、太陽と地球の距離の1/8の位置に存在している
ということなんです。これがどれぐらい異常なことか分かりますでしょうか?
万有引力の法則は、その物体が大きく重い方が大きな引力を持ちます。太陽の8倍と4倍の星なら相当な引力を持っているはずです。そんなふたつの星がそんな至近距離で引き合ったら、普通なら一瞬にして衝突します。それが衝突せずに存在している・・・。となると、その強力な引力を打ち消せるほどの遠心力をお互いの回転によって発生させているということになります。
イメージしてください。太陽の8倍と4倍の大きさの燃えるような星が、至近距離でグルグル回っている様子を。しかも、距離が近すぎて互いの潮汐力によって星の形状が楕円体型に歪んでいるそうです。もう、これは、麦穂でも真珠でもありませんね・・・(^_^;)
しかも!
近年の観測で、スピカのは更に3つの伴星があることが判明しています。
スピカは2重連星ではなく、5重連星だったのです。
ネットを探しても、他の伴星の情報はあまり出てこないのですが、とあるフォーラム(海外なのでよく分からない)にこんなデータが載っていました。
※mass:太陽を1とした質量
Lum:太陽を1とした明るさ
Rad:太陽を1とした半径
Dist:太陽と地球の距離を1とした距離(天文単位)
えと、この表のAが主星のデータ、B・C・D・Eが4つの伴星のデータですね。信憑性はわかりませんが、AとBのデータはWikipediaと一致しますので、まあ、おそらく合っているでしょう。
これを見ると、ふたつ目の伴星・Cは、大きさが太陽の3倍。主星との距離が4天文単位。太陽と木星の距離より少し近いぐらいですね。
三つ目の伴星・Dは、大きさが太陽の2.5倍。主星との距離が40天文単位。一気に遠くなりましたね。これは太陽と冥王星の距離に近いです。
四つ目の伴星・Eは、大きさが太陽の0.54倍。おお、いきなり小さくなった。主星との距離が、、、え?! 10000天文単位?! 一瞬目を疑いました。なんで一気に250倍に・・・(^_^;) えっと、スケールが分かりにくいですが、おそらく0.16光年ぐらいの距離ですね。(←余計分かりにくい) よくそんな離れた天体を伴星だと判断できましたね(笑)
というわけで、スピカの主星の周りには結構大きな恒星が4つもグルグル回っているらしいです。3つめ以降がすごく小さいなら分かるのですが、こんな大きな恒星が回っていてよくバランスを保っていられるなあ。
どんな状況なのか、今度行ったときに見て来ますね(ぉぃ)
それでは今日はこの辺で!