先週末、おとめ座のスピカまで行ってきたので、その写真を公開します(なんでやねん)
初音ミクという音声合成ソフトウェアが発売になって以来、ネットにはアマチュア作曲家の楽曲が溢れるようになりました。これは素晴らしいことです。曲は作れても、それまでは歌ってくれる人が居ないため、なかなか公表できない人が多かったと思うのですが、初音ミクの登場が時代を変えました。一般消費者の人たちが、誰でも自由に歌を作ってミクに歌わせて公開することができるようになったのです。
企業ではなくユーザーがコンテンツを作る、すなわちUGC(User Generated Contents)時代の幕開けです。
そんな初音ミクの曲で、最近頭から離れない曲があります。「SPiCa」という曲です。作詞:とくPさん&Kentaxさん、作曲:とくPさん。結構有名な曲なので、ご存じの方も多いと思います。初音ミクの曲はたくさん聴きましたし、好きな曲もたくさんありますが、この曲は別格だと私は思っています。(記事の後に動画を貼りますので、興味のある方は聴いてください)
曲はもちろんのこと、歌詞が良い。好きな男の子にうまく気持ちが伝えられない女の子の想いが、宇宙をかける壮大なロマンになっています。以下、サビの部分の歌詞です。
抱きしめて 出会わなければ 個々
受け止めて デネボラを飛び越え行くわ
ワガママな歳差 星(キミ)のようだね追いかけて うかぶパノラマ
五線の上で 流れ星
いま歌うから 照らしてよね スピカ
解釈が難しい部分もありますが、美しい情景が目の前に浮かんで来ます。
うしかい座のアークトゥルス、おとめ座のスピカ、しし座のデネボラは「春の大三角形」と呼ばれていますが、一方、アークトゥルスとスピカは「夫婦星」とも呼ばれています。この歌では、片思いの男性がアークトゥルス、自分をスピカに当てはめています。そこから「デネボラを飛び越えて、あなたのところに行くわ」という言葉が出てくるんですね。
そして一番旋律が盛り上がる「ワガママな歳差 星(キミ)のようだね」の部分の解釈ですが、これが難しい。
地球の地軸は公転面から23.4度傾いています。これによって、春夏秋冬が生まれているのですが、実はこの地軸の方向は一定ではありません。人が生きる100年ぐらいの間ではほとんど変わりませんが、地軸はゆっくりと、まるで勢いの無くなったコマのように回転しているのです。その周期は25,800年。その地軸の回転運動を「歳差運動」と呼びます。
古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスは、スピカの位置を観測することでこの歳差運動を発見したと言われています。また、天文学者コペルニクスも、歳差運動の研究のためにスピカを利用していました。スピカと歳差は切り離せない関係なんですね。
で、歌詞は「ワガママな歳差 星(キミ)のようだね」です。おそらくですが、地軸がグラグラしている歳差運動と、ワガママな彼を重ねているのだと思います。すごいスケールの話ですね。
さて、それではその「SPiCa」の動画を紹介します。作曲したとくPさんが作ったPVもあるのですが、あえて初音ミクが踊りながら歌う動画を紹介します。何故かというと、これがたくさんの人たちの手で作られた究極のUGC(User Generated Contents)だからです。
まるで初音ミクが生きていて、本当に踊っているようです。私もMMDというこの動画を作ったソフトウエアを利用しているので分かるのですが、こんな滑らかな動きを作るのは至難の業です。この約3分半の動画の中に、どれだけたくさん努力が詰まっていることか・・・・
・この曲を作詞・作曲したとくPさんとKentaxさん
・この曲を聴いてダンスの振り付けを考え踊って見せてくれた足太ぺんたさん
・足太ぺんたさんの踊りを見て、それを元にダンスモーションデータを作ってくれたごしかんさん
・そのモーションデータに合うカメラモーションを作ってくれたMIMIZUKUさん、maru marumaruさん
・初音ミクの3Dモデルデータを作ってくれたまままさん、アラン・スミシーさん
・背景やステージ、エフェクトを作ってくれた、たくさんの人たち(すみません、本当に大勢いるので・・・)
・そして、それらを上手に組み合わせて魅力的なダンス動画を作ってくれたmaru marumaruさん
本当にたくさんの人たちの合わせ技でこの動画が成立しています。
ちなみに、この動画の1分22秒ぐらいのところで、「ワガママな歳差~~♪」のシーンがあるのですが、そこでミクがキレイな360度ターンを決めます。この部分は一般に、
「歳差ターン」
と呼ばれています。試験に出るので覚えておいてください(笑)
さて、本当はこの後、スピカが5重連星だとか天文学的なお話をしようと思っていたのですが、長くなったので、いったん切ります。続きは後編で!