マイクロソフトのブラウザ「Internet Explorer(IE)」がついにサポートを終了するようですね。
私がIEを使っていたのはものの数年なのですが、1990年代の熾烈な第一次ブラウザ戦争に圧勝したIEが、ついにその終焉を迎えるのかと思うと、ひとつの時代の終わりを感じずにはいられません。
今回はインターネット・エクスプローラーの歴史を振り返ってみましょう。
その昔、ブラウザと言えばネットスケープ・ナビゲーターだった
私が始めて「インターネット」というものに触れたのがいつだったかハッキリは覚えていないのですが、Windows95が発売になって、パソコンを更新した少し後だと思うので、多分1996年ぐらいだったのかな。
その当時、「いんたーねっとでほーむぺーじをみる」ということ自体が一般的ではなく、一部のマニアックな人の趣味みたいな感じだったのですが、そのほとんどの人がネットスケープ・ナビゲーターを使っていました。
現在、Webサイトを見るためのWebブラウザを有償で購入する人はいませんが、当時はお金を出してブラウザを買ってくるのが普通のインターネットのスタート方法でした。ネットスケープ・ナビゲーターは確か3,000~4,000円ぐらいだったようが記憶があります。当時は高架下にあったヨドバシカメラ札幌で、パッケージを眺めていたことを覚えています(笑)(今だと信じられませんが、当時、欲しいものの値段を調べるにはお店に行くしかなかったんです!)
ネスケとIEによるブラウザ戦争勃発
その頃、マイクロソフトのインターネット・エクスプローラーというものは存在していたようですが(時期的にVer.2ぐらい)、周りでは誰も使っていなかったので私は知りもしなかったですし、実際にほとんどシェアは無かったようです。いま調べてみたら、後のようにWindowsにバンドルされていたわけでもなく、特段高性能というわけでもなかった(というかお粗末なブラウザだった)みたいですね。ウェブブラウザはネットスケープ・ナビゲーターの独壇場だったわけです。
そして、インターネット・エクスプローラーのVer.3であるIE3がリリースされ、それが無料で配布されるようになっても、それまでのウェブページとの互換性の悪さからあまり普及せず、ネットスケープ・ナビゲーターの牙城は崩せません。私も無料になってからインストールしてみたのですが、違和感があったため、ほとんど使っていませんでした。
しかし、1998年、大事件が起こります。
禁断の一手、マイクロソフトの逆襲
1998年、マイクロソフトは3年ぶりに新しいOSを発売します。そう、Windows98です。
ブラウザ戦争でうまく主導権を握れないマイクロソフトは、ここで禁断の一手を打ってきます。なんと、Windows98にインターネット・エクスプローラー4(IE4)を標準装備したのです。
これをやられるとネットスケープはたまったものではありません。さらにWindowsとIEが統合してしまった(IEがWindowsの機能の一部になってしまった)ため、IEの起動が一瞬であり、その部分でもネットスケープは不利になりました。当時の低価格パソコンでは、ネットスケープを起動するに数十秒ぐらいかかっていた記憶があります。
そうなると、ウェブデザイナーもアプリの開発者も、インターネット・エクスプローラーを基準に制作を行うようになります。そして、ネットスケープ・ナビゲーターで閲覧すると崩れてしまうサイトが多くなるという悪循環が発生。
ネットスケープも無料にするなどの施策を行いますが、焼け石に水。開発も後手後手に回ってしまい、ユーザーが離れていく一方でした。
なんだか、マイクロソフトがずるい手で逆転した感じですが、その3年後にはもうIEが市場を独占していました。圧勝といって良いでしょう。
このように、ネットスケープ・ナビゲーターとインターネット・エクスプローラーは激しいシェア争いを展開したわけですが、この争いは、後に「第一次ブラウザ戦争」と呼ばれるようになりました。
個人的には、黎明期のネットスケープのアイコンの流れ星のような動きが大好きで、かなり長い間ネットスケープを使い続けていました。あの、「通信している!!」というレトロ感がなんとも言えませんね(笑)
シェア独占の代償
2001年に88%というシェアを獲得したインターネット・エクスプローラー。Windowsにバンドルされていることから、その栄華は永遠に続くかとも思われました。しかし、たけき者も遂にはほろびぬ。その状況は永くは続きませんでした。
世の中、善意だけで出来ているわけではなく、それは当然ネットの世界も同じです。世の中のネットユーザーの88%が使用しているブラウザ。逆に言えば、そこを攻略すれば、世界の88%を征服できるのです。そうです。セキュリティホールを狙う、ハッカーの暗躍です。
「Nimda」というコンピュータウイルスをご存じでしょうか? 2001年9月、瞬く間に世界中に蔓延し、恐ろしい被害を生みました。何せ、ウェブサイトに感染し、そのサイトを閲覧しただけでIE経由で感染してしまうので、お手上げです。
それ以降も次々とIEを標的にしたウイルスが登場し、インターネット・エクスプローラーはその対応に追われ停滞。そして世間には、「インターネット・エクスプローラー以外のブラウザ」を求める風潮が出てきました。それが2004年ぐらいのお話です。
ネットスケープからFirefoxへ
そんなときにタイミング良く登場したのが「Mozilla Firefox(モジラ・ファイアーフォックス)」というブラウザ。
遡って1998年、ネットスケープ・ナビゲーターはIEの競争の激化に自社での開発が追いつかなくなり、オープンソース化に踏み切ります。そのオープンソース化された一連のアプリケーション群が「Mozilla Application Suite(モジラ・アプリケーション・スイート)」と言い、そのMozillaをベースに新しく開発されたウェブブラウザが「Mozilla Firefox」です。2004年のリリース。
ネットスケープ・ナビゲーターも紆余曲折ありながらも、細々と開発を続けておりましたが、Firefoxはその子孫みたいなものです。
Firefoxはネスケの欠点でもあった肥大化プログラムをコンパクトにまとめ、「軽量ブラウザ」としてリリースしました。これが大当たり。時代の「脱IE」の風潮を追い風に一気にシェアを獲得します。
私はというと、その頃、タブブラウザにハマっていました。当時、1ウィンドウで1ページしか表示できないブラウザがほとんどだったのですが、IEベースの「Donut(ドーナッツ)」というブラウザに出会って世界が変わりました。1つのウィンドウの中に複数のタブを開いて、たくさんのウェブページを同時に開いておける、なんて素晴らしいんだ!!
基本的に私の思考は拡散する一方で収束しないタチなので、(良いか悪いかは別として)タブブラウザはぴったりでした。常に20枚ぐらいタブを開いているという(笑)
Donut → Donut P → unDonut
いろいろ使って楽しみましたが、最終的にはタブが実装されたFirefoxに落ち着きました。
そんな状況なので、私がIEを使っていたのって、実際に2~3年ぐらいだったのではないでしょうか。最後まであまり好きになれませんでした。
第二次ブラウザ戦争とGoogle Chromeによる世界統一
ああ、ここまで書く予定無かったのですが・・・(汗)
書き始めたら止まらなくなった。
2008年、Googleは割とひっそりとブラウザ「Google Chrome(グーグル・クローム)」をリリースします。
IEのセキュリティホールはいまだに解消されていなかったため、前述のFirefox、昔からあったOpera(オペラ)、アップル社が開発したSafari(サファリ)、それにGoogle Chromeを加えて、混沌としたシェア争いが始まりました。これが後に「第二次ブラウザ戦争」と呼ばれる時代です。
最初は地味だったGoogle Chromeですが、やっぱりGoogle先生は別格です。2012年にはシェア1位を獲得し、第二次ブラウザ戦争に終止符を打ちました。
そしてこれが現在まで続いています。2021年4月の統計で、デスクトップブラウザの67.5%がGoogle Chromeになっています。IEはなんと1.7%。これはサポート終了しても誰も文句は言えませんね。
あ、ブラウザシェアの変遷を視覚的に表現している動画があったので共有します。これ、面白いです!
オペラってある意味すごいな・・・
それと、2012年のChromeの急上昇にビビりました。何があったんだ(汗)
マイクロソフト・エッジが後継
IEが無くなってもWindowsの標準ブラウザが無くなったわけではありません。Windows10からEdge(エッジ)というブラウザがバンドルされています。しかし、これはIEとは全く別物で、なんとGoogle Chromeの原型である「Chromium」がベースになっています。こちらは年々シェアを伸ばしており、いずれGoogleの牙城を崩すかもしれない、と言われています。
はい。
なんだかうまくまとまりませんでしたが(爆)、インターネット・エクスプローラーとブラウザ戦争を振り返ってみました。
普段、何も考えず使っているウェブブラウザですが、みなさんいろいろと苦労して作り上げたものなんですよね。そんな素晴らしいものが自由に無料で使える、なんて良い時代になったんでしょう。