エリダヌス座の無数の銀河。セロ・トロロ汎米天文台のダークエネルギーカメラで撮影された幻想的な写真

セロ・トロロ汎米天文台(チリ)のダークエネルギーカメラが撮影した無数の銀河。高解像度版はこちら【高解像度版】
CREDIT:CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA

  

セロ・トロロ汎米天文台で撮影された無数の銀河

今回は天体写真のお話。
上の写真は、チリのセロ・トロロ汎米天文台にある口径4mのビクター M. ブランコ望遠鏡ダークエネルギーカメラによって撮影された天体写真です。

この画像の視野は11.62 x7.48分とのことで、標準的な満月の直径が約30分(60分=1°なので、約0.5°)であることから、長辺が満月の1/3程度の大きさのエリアが写っています。

方向的にはエリダヌス座の一角を捉えたものですが、写っている明るい点は、個々の星ではなく、膨大な数の星の集合体、いわゆる「銀河」です。たとえば、画像の右上の方にあるリング状のものは「LEDA 14884」という銀河です。

銀河や星雲って、イメージ的にはところどころに点在しているという感じがありますが、見えないだけでこんなに密集しているものなんですね。月よりも小さいエリアにこんなにたくさんあるなんて驚異的です。

同じように無数の銀河を撮影したものにハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールドというのがあり、以前このブログでも紹介したのですが、

超深宇宙領域「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド」
みなさん、この画像、何の画像だと思いますか? 星空の写真? それにしては、星の粒が大きいと思いませんか。   ハッブル望遠鏡というのがあります。この望遠鏡が実にすごいもので、なんと宇宙空間に浮いている望遠鏡なんです。 この画像、イメージ写真ではなく実写の写真です。スペースシャトルから撮ったらしいですね。このようにハッブル望遠鏡というのは、地球から600km上空の軌道上を周回している望遠鏡なのです。...

これは宇宙空間に設置されたハッブル宇宙望遠鏡だから撮影できたものだと思っていました。しかし、同じような写真を地上の望遠鏡で捉えたというのはとても興味深いですね。地球上から宇宙を観測すると、多かれ少なかれ大気による揺らぎや歪みが発生するはずなのですが、その問題をどうやってクリアしたんでしょうね。

テクノロジーの進歩で天文学は新しい領域に入っている感じがします。

 

セロ・トロロ汎米天文台とは

セロ・トロロ・汎米天文台はチリのラ・セレナの近くの山の上、標高2200mの場所にある天文台です。気象による影響を最小限にするため、標高の高いところに設置されています。

セロ・トロロ汎米天文台 The original uploader was David walker at English Wikipedia., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

場所は南米のチリですが、アメリカ国立光学天文台(NOAO)に所属しており、大学天文研究機構 (AURA)によって運営されています。

設置されている望遠鏡は以下の通り。

・4mのビクター M. ブランコ望遠鏡
・1.5m、1.3m、1.0m、0.9mの望遠鏡
・4.1mのSOAR望遠鏡

さらに、運営が少し違うのですが、隣の山であるセロ・パチョン山には、ジェミニ南望遠鏡として8.1mの望遠鏡が設置されています。

 

ダークエネルギーカメラとは

この写真を撮影したのは、ビクター M. ブランコ望遠鏡に設置された「ダークエネルギーカメラ」なのですが、この「ダークエネルギーカメラ」とはいったいどんなものなのでしょう?

私も初耳だったのですが、どうやらダークエネルギーで駆動するカメラとか、ダークエネルギーを撮影できるカメラ、というわけではなさそうです。

中身は超高感度の520メガピクセルのデジタルカメラで、一般的な可視光の(おそらく赤外線も含む)光学カメラです。

520メガピクセルというのはピンと来ませんでしたが、

520Mpixel = 520,000,000pixel → 5億2000万画素

になります。近年の一般的な家庭用デジタルカメラが2400万画素ぐらいですから、その約22倍の解像度ということになりますね。

ただ、それ以外は大きな特徴がなく、要するにダークエネルギーカメラは、「とても感度がよくて解像度が高い普通のデジタルカメラ」というわけです。

ではなぜこんな名前になったのか?

いや、その前に、「ダークエネルギー」とはなんなのか?

ダークエネルギー(ダークエナジー、暗黒エネルギー、英: dark energy)とは、現代宇宙論および天文学において、宇宙全体に浸透し、宇宙の膨張を加速していると考えられる仮説上のエネルギーである。2013年までに発表されたプランクの観測結果からは、宇宙の質量とエネルギーに占める割合は、原子等の通常の物質が4.9%、暗黒物質(ダークマター)が26.8%、ダークエネルギーが68.3%と算定されている。
Wikipediaより

なんと、存在するかも分からない「仮説上のエネルギー」なのです。

宇宙は今現在も膨張しており、さらに膨張が加速している、というのが現在の科学なのですが、万有引力の法則に基づけば、天体同士は引力で引かれあうため、宇宙は膨張は減速しなければなりません。でも、観測の結果、膨張は加速している。

じゃあ、まだ発見されてないけど、宇宙には膨張を促進されるなんらかのエネルギーがあるんだ!

という発想のもとに1998年、マイケル・ターナー氏が提唱した言葉がこの「ダークエネルギー」です。

2021年現在、ダークエネルギーの存在はまだ仮説のままですが、2012年にそのダークエネルギーを調査するために開発されたのか、このダークエネルギーカメラなんですね。

ダークエネルギーの効果を計るためには、宇宙の膨張を正確に計測する必要があります。そのためには深宇宙の天体を観測するシステムが必要ですよね。そのために用意された超高感度、超高解像度のデジタルカメラが、ダークエネルギーカメラなのです。

2012年から稼働し、ダークエネルギーに関する観測はひととおり終えたようですが、これからも、こんな素晴らしい写真をどんどん見せてもらいたいですね。
 

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