小惑星2020 SOは、1966年に打ち上げられて行方不明になっていたロケットだった

小惑星のイメージ

 

サーベイヤー2号とアトラス-セントールロケット

ちょっと昔の話。1966年9月20日、アメリカのケープ・カナベラルからアトラス-セントールロケットで月面探査機・サーベイヤー2号が打ち上げられました。

アトラス-セントールロケットの打ち上げ風景(サーベイヤー1号の打ち上げ時で2号ではない)。Wikipediaより引用

サーベイヤー2号は、アポロ計画の前調査を行うため、月面に着陸して月面の写真を地球に送信する予定でした。



しかし、サーベイヤー2号は、月に行く途中、セントールと分離した後に軌道修正に失敗。1966年9月22日に通信を途絶し、それ以来音信不通になりました。本来は月面に軟着陸する予定でしたが、通信途絶直前の状況から、月面に衝突してしまったと思われます。

そして、サーベイヤー2号を分離したロケット・セントールは、月を通過して、宇宙に消えていきました。

 

小惑星2020 SO。もうひとつの月。ミニムーン

 
時は流れて2020年。地球に近づいている小惑星2020 SOが発見されました。その小惑星は珍しいことに、地球に近づいたあと、地球の引力に捕らわれ、数ヶ月ほど地球の周りを周回することがわかりました。

地球の周りを周回する2020 SOの動き
(紫:2020 SO 青:地球 黄:月)

「もうひとつの月」、「ミニムーン」などと呼ばれて天文ファンたちを喜ばせましたが、この小惑星について調べていくうちに、いくつか不思議なことが判明したのです。

・軌道を逆算すると1966年にも地球や月の超近くを通過していた
・太陽光の圧力によって軌道が変わっている。すなわち軽い金属でできている

天文学者は考えました。

「これはもしかして、、、、」



 

小惑星2020 SOはセントールロケットだった

2020年11月、地球に接近した2020 SOを、分光観測と言う手法で観測、分析したところ、アトラス-セントールロケットの最上段ステージであるセントールと同じ材質であることが判明しました。

これで確定です。2020 SOは小惑星ではなく、1966年に月面探査機サーベイヤー2号を分離した後行方不明になっていたロケット・セントールだったのです。そんなことがあるんでしょうか。奇跡としか思えません。

サーベイヤー2号を打ち上げたアトラス-セントールロケットは3段型で、アトラスが1段目と2段目、セントールが上段に使われていました。ロケットは燃料を使い果たした部分を切り離すので、サーベイヤー2号が月の近くまで行ったときは上段ステージであるセントールのみとなっていたんですね。

打ち上げ前のセントールロケット。Wikipediaより引用

 
1966年、セントールはサーベイヤー2号を分離し任務を果たした後、サーベイヤー2号の失敗を知ったか知らないかはわかりませんが、月を通過して、その後54年間も宇宙を彷徨い、ようやく地球に帰ってきたのですね。はやぶさもびっくりな奇跡の生還です。

最後の地球最接近が2021年の2月上旬ですから、4月である今は少しずつ地球から遠ざかっているところですね。

おかえりなさい、セントール。
そして、いってらっしゃい。
また戻ってきてね。