「となりのトトロ」レビュー|現代日本では失われつつある何かがそこにある

2020年6月2日

 となりのトトロ バス停でトトロに傘を貸すシーン
 となりのトトロ バス停でトトロに傘を貸すシーン

今日の札幌は最高気温+7.9℃。2月中旬と言えば一年でもっと寒い季節です。なぜこんなに暖かい?!

さてさて、今日は子供たちと一緒に映画「となりのトトロ」を見ました。一昨年にテレビで放映されたのを録画してあったんですね。私が初めてトトロを見たのは、おそらく一番初めのテレビ放送。調べたら1989年でした。すごいですよね、一昨年(2014年)の放送でなんと14回目。アニメ映画でこれほど繰り返し放送された作品が他にあるんでしょうか? しかもその視聴率が19.4%だったとか。28年前の映画であるにもかかわらず、何一つ色あせてないと思っているのは、たぶん私だけじゃないのでしょう。



宮崎駿監督の映画には名作がたくさんありますが、私はこの「となりのトトロ」が一番好きです。私の嗜好から言えばファンタジー系のSFが好みなので、天空の城ラピュタあたりがストライクなんですけど、トトロは別格だと思っています。私は、この映画を表現するにあたって、よくこんな言葉を使います。

 「田舎暮らしのバイブル」

現代の日本は、一般的に「効率」を重視する傾向がありますので、地方での生活を「なんでそんな不便なところで?」と感じている人が多いことでしょう。でもこの映画は、そんな暮らしの素晴らしさ楽しさを見せつけてくれています。オバケに会えることが、じゃないですよ? 生活そのものの話です。

特に私がお気に入りなのは、3人でお風呂に入っているシーンです。そのシーンを見る度に、なんか幸せそうだなあ、と思うんですよね。うちにも小さな娘が2人いて、3人でお風呂に入ることもあるのですが、こんなに浴室が広くないですし、日常生活の中でのんびり湯に浸かる余裕も無いんですよね。今日、このシーンを見たときに、お風呂だけでももう少し広く作れば良かったと思いました(笑)
 

さて、この映画の中で注目すべきはやはり「トトロ」というオバケの存在ですよね。うちの娘はアニメを見ていても巨大な化け物が出てくると怖がるのですが、トトロは大丈夫でした。まあ、見た目も「大きな動物」みたいな感じですので、恐怖はないでしょうけど、考えてみたら、古今東西の物語の中で、これほど愛嬌があって「優しいオバケ」はあまり居ないのではないでしょうか? そもそもトトロの場合は、人と敵対するものではなく、「ちょっとズレたところに存在している」だけなんですよね。



サツキとメイには見えてましたが、他の人には見えないようでしたし、そのサツキとメイでさえ、常に会えるわけではありません。「トトロが実際に存在するか」という無粋な問いを敢えて考えるなら、

 「存在するかもしれないし、しないかもしれない」

ということになりますね。だって、居ても見えないんですもの、確認のしようがありません。そういう存在って、実は現代にもたくさんあるのかもしれませんよ。少なくとも、事実を知らずに「居ない」と否定してしまうことで、楽しみの一部を自ら潰してしまうのは避けたいものです。

となりのトトロ・・・、この映画の中には、現代日本では失われつつある何かがあるような気がします。