なぜ時計の針は右回り? なぜ1日は24時間? なぜ1時間は60分? 時計の秘密を探る

普段は何も疑問を抱かずに普段から使っている慣れ親しんだものでも、よく考えると何故そうなのかよくわからないものってありますよね。

信号機はなぜ赤が「止まれ」?
日本車の運転席はなぜ右側??

今回は、日常に潜むそんな些細な疑問の中から、時計にまつわるものを紹介したいと思います。

あ、ちなみに、信号機の止まれが赤なのは「遠くまで届く波長の光だから」で、日本車の運転席が右側なのは、日本は左側通行のため、「右側に運転席がある方が道路全体を見渡しやすいから」です。

 

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なぜ時計の針は右回り?

「時計回り」という言葉がありますが、時計の針の回り方は右回りの全てのものの代名詞みたいになっていますね。でも、時計の針はいつから右回りで、なぜそうなったのでしょう??

実はこれ、とっても簡単なのです。大昔、今のような機械式の時計が無かったころ、人々は時刻を知るために垂直に立てた棒の影が時刻とともに動いていく仕組みを利用していました。いわゆる「日時計」です。日時計は紀元前3000年の古代エジプトで使われていたことがわかっていますが、さらに古くから使われていたとも言われています。

北半球において、日時計の針(垂直に立てた棒の影)は時とともに右回りで動いていきます。北半球の方が文明が進んでいたため、今のアナログ時計を最初に作った人は、北半球の日時計の回り方を参考にして作ったんですね。

なぜ時計の針は右回りなのか? その答えは、

「日時計が右回りだったから」

です。

札幌の屯田東公園にある日時計。2019年撮影

ちなみに、自動車のメーターも電気の電圧計も様々な場所で使われる一般的なネジも、全部右回りです。これらも全て日時計の回り方がルーツだと言われています。面白いですね!!

 

なぜ1日は24時間?

1日は24時間となっています。1日というのは地球の自転が一周する時間なので、それを24等分したのを1時間の長さに決めたということです。

私達は生まれてからずっと1日が24時間だったので、特に疑問を持たずに暮らしていますが、よく考えると、10でも20でも30でもなく、なぜ24になったのか不思議な感じがします。ここでは1日が24時間になった理由をお話したいと思います。

大昔、時刻を知る手段としてハッキリしていたのは日の出と日没だけでした。それ以外は太陽の位置などで漠然と時間を把握していたようです。でも、それだけではあまりにも不便だったので、日の出から日没までの時間を等間隔に分けよう、と考えるようになりました。それが「時刻」の概念の始まりです。

古代エジプトなどでは、その当時一般的であった数の数え方が十二進法だったため、それに基づき、日の出から日没までの時間を12等分しました。すでに古代エジプトには日時計があったため、晴れてさえいれば正確な時刻を知ることができたんですね。ただし、季節によって昼の長さは変化しますので、「1時間の長さ」も季節ごとに変化するものだったと思われます。

そして、昼だけ時刻があるのがおかしいということで、日没から日の出までの夜の間も12等分し、1日を24時間としたようです。日時計が使えない夜は星の位置などで時刻を図っていたようです。

その後、日の出時刻と関係なく24時間を等間隔にしたり、24時間のスタートが日の出でなく深夜になるなど、いろいろな変遷を見せますが、これがゆっくりと世界中に広まっていき、現代に至ります。

ちなみに、なぜ古代エジプトで十二進法が一般的だったかというと、手で数を数える際に、親指で他の指の関節に触れながら数えていく指数え法が一般的だったからと言われています。人差し指、中指、薬指、小指にそれぞれ3つずつ関節があるので、親指でこれらを1つずつ触りながら数を数えたんですね。

ということで、「なぜ1日が24時間なのか」ということを突き詰めていくと、

「昔は十二進法が主流だったから」
       ↓ ↓ ↓
「親指以外の指の関節が12個だったから」

ということに行き着きます(笑)

 

なぜ1時間は60分? なぜ1分は60秒

さて、1日が24時間である理由はわかりましたが、なぜ1時間は60分なのでしょうか? これは結構話が複雑です。

古代ギリシャにヒッパルコスという天文学者がいました。ヒッパルコス紀元前190年ごろから紀元前120年ごろにかけて活躍していたのですが、実はすごい学者で、

・現代に繋がる46個の星座を決定
・星の明るさを1等星から6等星に分けた
・地球の歳差運動の一種である春分点歳差を発見した
・地球の東西を360に分割し経度の概念を誕生させた

など、現代に繋がっている大きな発明や発見をしています。

で、時計の話に戻りますが、古代エジプトで開発された季節によって変わる1時間の長さを、単純に1日を等しく24分割した長さにすることを提唱したのもこの天文学者ヒッパルコスだったのです。

ヒッパルコスは1年の長さが約365日であることから、地球を360に分割し「経度」を定義しましたが(←これ強烈にすごい発想だと思います。天文学者じゃないと出てこない発想)、その1度をさらに細かく60等分しそれを「1分」、さらに60等分しそれを「1秒」としました。当時のギリシャの天文学の世界では六十進法が普通に使われていたようです。その理由は後述。

なんでそんなに細かく分ける必要があったのか謎なのですが、西暦2022年の現代でも使われている経度というものが、紀元前の天文学者が作ったものだということが衝撃ですね。

話は少し逸れましたが、そんなヒッパルコスは、1日を等間隔に24分割しただけでは飽き足らず、さらに細かく時刻も定義しようとしました。そして、経度の定義に導入した「分」と「秒」をそのまま時刻にも導入したんですね。

緯度経度を表現する際に、現代でも分と秒が使われており、なんで時刻と同じなのか不思議に思っていたのですが、同じ学者が開発して、しかも緯度経度の方が先だったんですね! これはビックリです。

さて、話は戻りますが、古代ギリシャでは(古くは古代バビロニアも)、なぜ六十進法が使われていたのでしょう? 指では数えられないし、文字で表記するにも不便極まりないです。10とか100じゃダメだったのか??

実は、「60」という数字は素晴らしい特徴があるのです。それは「いろんな数で割りきれる」という特徴です。「60」という数字は、なんと約数が12個もあります。

60を割って割り切れる数(約数)
 → 1, 2, 3, 4, 5, 6, 10, 12, 15, 20, 30, 60

これは、いろんな数字で正しく「分割」できることを意味します。
60個のまんじゅうは、3人でも5人でも6人でも分けることができます。こんな数字あまりないのです。100個ならまず3人で分けられません。

そういう理由で当時の学者たちは好んで六十進法を使いました。そして、それは時刻にも使われるようになりました。私たちは当然のように使っていますが、1時間が60分というのは、いろんな数で等分しやすく、便利な点が多いのです。

ということで、「なぜ1時間は60分なのか? なぜ1分は60秒なのか?」という問いの答えは、

「当時の学者たちの間で六十進法がよく使われたから」
       ↓ ↓ ↓
「いろんな数で割り切れて便利だから」

ということになります。

 
いやあ、面白いですね。
人に歴史あり、物にも歴史あり――――
いろんな時代のいろんな要素が絡み合って、今があるんですね。

この記事、実は書くのに3日もかかってしまったのですが、とても勉強になりました!
 

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