今回は世界の紙幣のお話。
世界にはとんでもない金額が書かれた紙幣が存在しています。世界で最も大きな額面が書かれた紙幣を紹介したいと思います。
登場するのは、なんと100兆ジンバブエ・ドル紙幣と10垓ペンゲー紙幣です!
世界一大きな桁の金額が書かれた紙幣・100兆ジンバブエ・ドル
日本の紙幣で最も大きな桁数が書かれているのは一万円札ですよね。「10000円」です。
では世界では?
100000?
1000000?
世界は広いもので、私達の想像を遥かに超える桁数の紙幣があります。
それはアフリカのジンバブエにあった紙幣で、なんと、「100兆ジンバブエ・ドル」。数字にすると、
100000000000000ジンバブエ・ドル
わかりやすいようにコンマを付けましょう。
100,000,000,000,000ジンバブエ・ドル
です。
何という桁数、、、
パッと見ただけじゃこれがどれだけの金額なのか解りませんね。
これは2009年にジンバブエで実際に発行され流通していた紙幣です。流通していた期間はわずかですが、さぞ国民は混乱したことでしょう。
100兆ですよ100兆。
私たちの日常では1億円でも大金ですが、1億の1万倍が1兆です。100兆はさらにその100倍。
100,000,000 → 1億
10,000,000,000 → 100億
1,000,000,000,000 → 1兆
100,000,000,000,000 → 100兆
これが「円」だったら、どんな大金なのか現実感が湧きません・・・
ジンバブエ政府はなんでこんな大きな桁の紙幣を作ったのでしょう??
ジンバブエを襲ったハイパーインフレ
ジンバブエ政府は何故100兆ジンバブエ・ドルなどという大きな桁の紙幣を作ったのか?
とても簡単です。そんな紙幣を作らなければならないぐらい、物価が上昇してしまったから、です。
ジンバブエという国は、1990年代から物価が上昇傾向にあったのですが、2000年代に入ってからその上昇が激しくなりました。
2回のデノミネーション(通貨単位の切り下げ)を行なわれ、3番目のジンバブエ・ドル紙幣が発行されたのは2008年8月1日。このときはまだ1・5・10・20・100・500ジンバブエ・ドル紙幣と、6種類の紙幣しかありませんでしたが、あっという間に物価が上昇し・・・
9月17日 1000ジンバブエ・ドル紙幣を発行
9月30日 2万ジンバブエ・ドル紙幣を発行
10月14日 5万ジンバブエ・ドル紙幣が発行
と、わずか2ヶ月半で100倍の額面の紙幣が発行されます。物価が100倍ぐらいになっていたってことですよね。でも、そこで物価上昇が止まったりはしません。
11月3日 10万・50万・100万ジンバブエ・ドル紙幣を発行
12月3日 1000万・5000万・1億ジンバブエ・ドル紙幣を発行
翌2009年
1月12日 200億・500億ジンバブエ・ドル紙幣を発行
1月16日 10兆・20兆・50兆・100兆ジンバブエ・ドル紙幣を発行
ここでついに100兆ジンバブエ・ドル紙幣の誕生です。
うーむ。
私、経済のことは詳しくないのですが、これ、紙幣を発行する以外の施策はなかったのでしょうか・・・(汗)
というかよくこの短期間にポンポンと新紙幣を作れたものです。
ここに出てくるだけで20種類以上の紙幣があります。
作っていたのはジンバブエ準備銀行なのですが、もはや新紙幣作成の達人ですね!
さて、そんな世界一桁数が多い紙幣である100兆ジンバブエ・ドル紙幣には、どれほどの価値があったのか?
残っている最後の記録(2009年2月2日)では、非公式レートで1ドル300兆ジンバブエドル。
それでいくと100兆ジンバブエ・ドル紙幣の価値は33.3セントですね。
同じ日の円相場を見ると、1ドル89.73円だったらしいので(何でも調べられるインターネットって素晴らしい!)、
100兆ジンバブエ・ドル=33.3セント=29.91円
となります。
これじゃ、100兆ジンバブエ・ドルを持ってお店に行っても、パン1つ買えませんね。
経済の崩壊。恐ろしいです。
なんでそんな激しいハイパーインフレが起こったのかについてはここでは詳しく書きませんが、当時のジンバブエ政府はおカネが必要になると、ポンポンと紙幣を発行していたようですね。いわゆるマネーサプライです。
通貨の量が増えると、当然物価も上がります。それに加えて、効果的な経済施策も行えなかったため、インフレに拍車がかかったようです。原因が政治にあると考えると、国民が可哀想ですね。
世界一大きな額面の紙幣・10垓ペンゲー(ペンゴ)紙幣
さて、100兆ジンバブエ・ドル紙幣は「世界一大きな桁の金額が書かれた紙幣」でしたが、額面ではもっと大きな金額が書かれた紙幣が存在しています。算用数字が描かれていないんですね。
それはハンガリーで1946年に作られた「10垓ペンゲー紙幣」です。
まず、この単位、読めます? 私は最初読めませんでした。
ハンガリーの当時の通過は「pengő」で、日本語では「ペンゲー」とか「ペンゴ」とか呼ばれていました。でも、問題はその前の漢字「10垓ペンゲー」の「垓」。これは「ガイ」と読みます。一般にはほとんど使われることはありませんが、「億」や「兆」に並ぶ立派な日本語の数字の単位です。
10000 → 1万
100000000 → 1億
1000000000000 → 1兆
10000000000000000 → 1京(ケイ)
100000000000000000000 → 1垓(ガイ)
これです。
1垓でゼロが20個つきますので、10垓だとゼロが21個ですね。
1000000000000000000000 → 10垓
わかりやすくコンマを付けましょう。
1,000,000,000,000,000,000,000ペンゲー
わかりやすいか、これ?? 数字に見えない・・・
これは紙幣に算用数字を描けないですね。
国税印刷局のウェブサイトに写真があったので、お借りしてきました。
額面の表記は算用数字ではなく、「EGYMILLIARD B.-PENGŐ」と記載されています。
EGY → 1
MILLIARD → 10億
B. → 1兆
ということで、表記の上では「10億兆ペンゲー」という書き方になっています。
もうどんな大きさなのか理解不能ですね。1兆円でも天文学的な金額なのに、その10億倍ですから(^_^;)
まあ、一言で言うと、
「なまらでっかい数」
ということでしょうか。(なぜ北海道弁?!)
この紙幣は「世界最高額の紙幣」としてギネスブックにも載っているそうです。
ただ、この紙幣はハンガリー中央銀行によって印刷されたのですが、実際に発行されることはありませんでした。まさに幻の紙幣ですね。実際に発行された紙幣の最高額は、1垓ペンゲー紙幣です。
SZÁZ → 100
MILLIO → 100万
B. → 1兆
ということで、こちらの表記は「1億兆ペンゲー」です。一応算用数字で書いてみると、
100,000,000,000,000,000,000ペンゲー
となります。いやはや、、、これが本当に流通していたとは、世界は広いですね。
終戦後、ハンガリーを襲ったハイパーインフレ
なぜハンガリー政府はこんな天文学的2な紙幣を発行したのか。これもジンバブエと同じでハイパーインフレーションが国を襲ったからです。
終戦後、物資不足と大量の通貨の発行によって、物価が上昇。
1945年5月1日の郵便料金は1ペンゲーだったのですが、
1946年1月には600ペンゲーに上昇。それ以降、どんどん加速して、
1946年3月 2万ペンゲー
1946年5月 200万ペンゲー
1946年7月 40兆ペンゲー!!
念のためにもう一度書きますと、これは郵便料金の話です。封筒ひとつを送るための価格です。これは1年ちょっとの間に、
1ペンゲー → 40兆ペンゲー
おそろしいですね。
記録にある最終的なレートは、1946年7月で、
1ドルが460,000,000,000,000,000,000,000,000,000ペンゲーだったようです。
これは、10垓ペンゲー紙幣があっても何も買えません・・・
国民はどうやって生活してたんでしょう??
とまあ、今回は高額紙幣のお話でしたが、経済の恐ろしさと政治の重要さがよくわかるエピソードですね。
勉強になりました!