「読書」というカテゴリを作っておきながら、ちっとも読書の感想が書けなかったこのブログ。いや、本は読んでいるんですよ、いっぱい。ただオタクっぽいのが多くて、どうもこのブログでレビューするのはちょっとって感じで(笑)
ということで、ようやく本のレビューが書けます。今回は西尾維新さんの小説「掟上今日子の備忘録」。ジャンルはミステリー。「忘却探偵」というシリーズ名でわかるように探偵モノです。
ミステリーは2年前ぐらいからいきなり読むようになりました。米澤穂信さんの「氷菓」を含む「古典部」シリーズを読んでからですね。
「推理小説? なんで娯楽のために本を読んでいるのに頭を悩ませなきゃなんないのさ」ということで、小説は読んでもミステリーは避けてきたのですが(同じ理由で名探偵コナンも読まない(笑))、米澤穂信さんのミステリーも、そのあと読んだ「万能鑑定士Qシリーズ」の松岡圭祐さんの作品も、ミステリーとしては軽く、どちらかと言えば、主人公が謎を解いていく姿に爽快感を覚えるタイプの小説だったので、「なあんだ、推理小説もいいじゃん」と色々読み始めた次第です。
でも、今回はそれ以前に、
「え?! 西尾維新さんって、ミステリー書くの?!」
というところで驚いてしまいました。
「<物語>シリーズ」といい「伝説シリーズ」といい、非現実的な独特の舞台設定がウリの作家なのに、ミステリー、それも良い意味でも悪い意味でも「普通の小説」を書いていることに意外性を感じました。
ただ、「忘却探偵って何よ」って感じなので、まずはその部分から語らなければなりませんね。
【掟上今日子の備忘録 あらすじ】
行くところ行くところで様々な事件に巻き込まれ、挙げ句の果てに容疑者にまでなってしまう不運な青年・隠館厄介(かくしだてやくすけ)は、今日も新しい勤務先でトラブルに巻き込まれていた。重要機密が詰まったSDカードが研究室から消えたのである。一番の新入りである厄介が犯人扱いされてしまい、自分の身を守るために、探偵の手を借りることにした。
そこで呼んだのは、最速の探偵と呼ばれる・掟上今日子(おきてがみきょうこ)。どんな事件でも1日で解決してしまう優秀な探偵だが、ちょっとした特殊な体質を持っていた。「眠る」と記憶がリセットされ全てを忘れてしまうのである。人は彼女のことをこう呼んでいる。「忘却探偵」と。
【レビュー】
優秀だけど、寝ると全てを忘れてしまう探偵、ということで「忘却探偵」となっています。探偵・掟上今日子が事件解決に充てられる時間は、ほぼ「1日」。逆に言うと、その時間内でほとんど解決してしまうと言うのが今日子の、そしてこの小説のウリになっています。この巻は隠館厄介の手記という形を取っており、すべて厄介の一人称視点で書かれているのですが、2巻目の「掟上今日子の推薦文」では別の青年が語り部となっておりますので、巻ごとに視点が違うのかもしれません。(2巻の序盤までしか読んでません)
率直な感想ですが、とても面白かったです。一気に読んでしまいました。シリーズなので続きも読もうと思います。短編連作の構成になっていて、338ページというボリュームですが、その中に5話入っています。(ただし、4話目と5話目は続きの話。)そういう構成ですから謎解き自体はシンプルで、ものすごく複雑なトリックがあったり、びっくりするようなどんでん返しはありません。探偵である今日子があっという間に謎を解いてしまうので、読者はそれほど悩む暇はありません。
どちらかと言えば、読者が謎解きを楽しむのではなく、今日子の明快な説明や厄介とのやり取りを楽しんだり、寝たら記憶がリセットされるという体質がらみでのエピソードを楽しむ小説なのかもしれません。実際、事件の解決直前に今日子が寝てしまい、ハラハラさせられましたが、そこからのリカバリーが素晴らしかったです。
厄介は今日子にほのかな恋心を抱いていますが、何せ寝るたびに記憶がリセットされてしまうので、どんなに良いムードになっても、次の日に会ったら「はじめまして」と言われてしまいます。これは切ないです。この恋の行方がどうなるのか、というのもこの巻の見所のひとつですね。
本格的なミステリーが好きな人には物足りない作品だと思いますが、残酷なシーンとかもありませんので、軽い感じでミステリーが読みたい人には良い小説だと思います。私はかなり気に入ったので、このシリーズを読んだ後は、西尾維新さんの別のシリーズも読んでみようと思っています。