島の話題が多いこのブログなのですが、今回は「島」ではなく「岩」の話題です。
東京都の南約650km、伊豆諸島の南の端の海の上に、ローソクのようにそびえ立っている大きな奇岩があるのをご存じでしょうか? その名は「孀婦岩」。「そうふがん」または「そうふいわ」と読みます。
この写真だけだとスケールがわかりにくいですが、なんと高さは99mもあります。
幅は東西に84m、南北56mと狭く、見るからに不安定で不自然な形をしています。北海道の余市町の海岸にもローソク岩という似たような奇岩があるのですが、この孀婦岩は近くに陸地はなく、最も近いのが伊豆諸島の鳥島で北に約76kmも離れています。海のど真ん中ですね。
GoogleMapで見るとこんな場所です。
これでも、所属は伊豆諸島の一部なので、東京都になるそうです。
なんでこんな場所にこんな尖った岩だけがあるのか。
この岩はあまり詳しく調査されておらず、詳細は謎なのですが、この岩の下に約2000mの高さの山があるそうなんです。要するに、海上に見えているのは山の山頂部分ということなんですね。高さ2000mのケーキにロウソクが載っているイメージです。
この山はまだ活動している活火山ということで、水深240mの位置には火口があるそうです。こういうのでも海底火山というのかな?
岩質は海底部分は玄武岩、海上部分は安山岩。このことから、この海上に突き出た部分はマグマが硬化して形成したものだということがわかります。もともとは普通の島のように円錐形の山頂部分が海上に出ていたのですが、海水の浸食により「山」の部分が削られて、その中央にあった「火道」と呼ばれるマグマの通り道の中身(冷えて固まったマグマ)だけが残ってしまい、現在の状態になったようです。それで不自然な形状なんですね。
この安山岩の部分についても、ゆっくりと海水の浸食を受けていくので。数百年~数千年後には無くなってしまう可能性が高いそうです。
私、島にはとてもロマンを感じ、それと同じようなロマンをこの岩にも感じるのですが、この映像を見てからは少し怖くなりました。GoogleMapに投稿された、船の上から孀婦岩を撮影した動画です。
怖い。怖いよ。
なんと荒々しい海でしょう? たまたまそういう日だったのかもしれませんが、こんな海の上をこの岩に近づいてみようとか思えないですね・・・。
さて、この岩の「孀婦岩」という名前についてですが、孀婦というのは、「夫と死別し、再婚していない女性」、要するに未亡人という意味です。なんで岩にそんな名前が付いたのか?
この岩が出てくる最も古い記録は、イギリス人で元海軍大尉のジョン・ミアーズによる1788年4月9日の記録で、Wikipediaによれば、
ミアーズは、この岩をその不思議な形から、旧約聖書の創世記19章26節に記された、神の指示に背いたために塩の柱に変えられてしまったロトの妻に見立てて「Lot’s wife(ロトの妻)」と名づけた。(中略) 日本語文献では1885年の『寰瀛水路誌』(刊行者:海軍省水路局)に初めて「孀婦岩(ロッツワイフ)」の名が現れる。「孀婦岩」は「やもめいわ」の意味であるが、これは「Lot’s wife」を意訳したもので、やがて音読して「そうふがん」と読まれるようになったと考えられる。今日では「そうふいわ」と呼ばれることも多い。
とのことです。
なんと、孀婦岩 → Lot’s wife(ロトの妻)→ 旧約聖書ということで、意外にも旧約聖書が語源になっているんですね。これはびっくりです。
この島については近年、NHKが詳しく調査を行い、2018年に『NHKスペシャル選 秘島探検 東京ロストワールド 第2集「孀婦(そうふ)岩」』として放送したようです。これは見たかった。DVDも出ているようなので、見つけたら借りてこようと思います。
大自然の神秘。素晴らしいですね。きっと世界には、まだ知られていない神秘がたくさんあるんだと思います。