木星探査機ジュノーが木星の衛星・ガニメデを接近撮影。ジュノーってどんな探査機?

2022年6月11日

2021年6月7日に探査機ジュノーが撮影した木星の衛星・ガニメデの写真。NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS, Public domain, via Wikimedia Commons

これは先日・2021年6月7日に探査機ジュノーが撮影した木星の衛星・ガニメデの写真です。すごいですね。まるで目の前にガニメデがあるかのようなリアルな写真です。地球の月にも似ておりますが、異質感がありますね。強いて言えば異世界の月を見ているような・・・

ここまでガニメデに探査機が接近したのは21年ぶりとか。近年、いろんな探査機が惑星を調査しておりますが、各惑星の衛星まではマメにカバーはできないようで、ガニメデの詳細画像も21年ぶりに更新されました。何か新しい発見に繋がるのかな??

というわけで、今回は木星探査機ジュノーと木星の衛星・ガニメデについてお話したいと思います。

 

ジュノーってどんな探査機?

ジュノーは木星の探査のためにアメリカのNASAが打ち上げた探査機です。
打ち上げたのは2011年8月5日。2013年の地球スイングバイで木星に向けて加速。2016年に木星に到着しました。



木星到着までの軌跡を映像にした動画があったのでシェアします。

 
姿図と搭載された観測機器は以下の図のとおり。

木星探査機ジュノーの姿図と搭載されている観測機器。NASA / Jet Populsion Laboratory, Public domain, via Wikimedia Commons

英語のしか入手できなかったので、観測機器の日本語名を書いておきます。

Magnetmeter (MAG) 磁力計
Microwave radiometer (MWR) マイクロ波放射計
Gravity Science (GS) 重力測定装置
Jovian Energetic Particle Detector Instrument (JEDI) エネルギー粒子検出装置
Jovian Auroral Distributions Experiment (JADE) オーロラ分布観測実験システム
Waves 電波実験装置
Ultraviolet Spectrograph (UVS) 紫外線撮像スペクトロメーター
Jovian Infrared Auroral Mapper (JIRAM) 赤外線オーロラマッピング装置
JunoCam ジュノーカメラ
Wikipediaより引用

特徴的なのは3枚の大きな太陽電池パネル。木星以遠に到達する探査機としては初めて太陽光によるシステムを搭載しています。(それまでは原子力電池。) はやぶさやあかつきなどの地球近傍の探査機と比べると、かなり大きな太陽電池パネルですが、太陽から遠い場所で活動するため、これぐらいの大きさが必要なのだそうです。

観測機器も独特で、木星の重力場、磁場、オーロラなどを細かく観測することがミッションになっています。

木星到着から現在まで4年以上にわたり様々な観測をし、学術的に凄まじい成果を上げているのですが、難しい話は置いておいて、ジュノーカメラが捉えた高解像度の美しい木星の写真を見てみましょう。

 
すごいです。圧倒されますね。
これらの画像を「美しい」と捉えるか「怖い」と捉えるかは人それぞれかと思います。私は少し怖いです。

計画ではジュノーは、37回にわたる木星本体のフライバイによる観測を終えたあと、意図的に木星の大気圏に突入し、焼却処分されるはずでした。

しかし、今年(2021年)2月、NASAから延長ミッションが発表されました。それが冒頭の写真でも紹介した木星の衛星の探査です。

木星4大衛星(ガリレオ衛星)のうちの3つ、ガニメデ、エウロパ、イオの接近探査です。これからどんな情報が送られてくるのか、楽しみですね!

 

木星の衛星・ガニメデってどんな天体?

さて、それでは今回ジュノーが接近撮影を行ったガニメデとはどんな天体なのでしょう?

木星には79個(2019年時点)の衛星が確認されていますが、そのうち、1600年代にガリレオが発見した4つの衛星・イオエウロパガニメデカリストはひときわ大きく、「四大衛星」もしくは「ガリレオ衛星」と呼ばれています。

そしてその中で最も大きな衛星が今回ジュノーが撮影したガニメデです。ガニメデは木星の衛星の中で最大であるだけではなく、太陽系全体の中でも最も大きな衛星です。驚くことに、惑星である水星よりも直径が大きい衛星なのです。



参考に太陽系の主要な衛星の比較図を載せておきます。

太陽系の主要な衛星・大きさの比較。NASAThis SVG image was created by Medium69.Cette image SVG a été créée par Medium69.Please credit this : William Crochot, Public domain, via Wikimedia Commons

 
ちなみに、このイダの衛星ダクティルって何だ?とお思いの方も多いでしょう。イダは火星と木星の間にある小惑星で、史上初めて発見された小惑星の衛星でもあります。詳しくはこちらの過去記事で。

 
地球の月は約30日かけて地球の周りを1周しますが、ガニメデは木星の周りを7日と3時間で1周します。公転半径が月の3倍もあるので、ものすごく高速で公転していることになりますよね。これはおそらく木星の引力が大きいためで、それぐらいのスピードで回らないと、木星に落ちてしまうのだと思います。

ガニメデよりも、内側の(木星に近い)軌道を、エウロパとイオが公転していますが、これらの3つの衛星は軌道共鳴を起こしており、公転周期が、

ガニメデ:エウロパ:イオ = 4:2:1

になっています。ガニメデが木星の周りを1周する間に、エウロパは2周、イオは4周するということですね。7日で1周も忙しいですけど、イオは1.7日で1周するという。まったく忙しい衛星たちです。

私も望遠レンズでガリレオ衛星の写真を撮ったことがありますが、毎日位置関係が変わっていることに驚きました。

2020年7月3日に撮影した木星とガリレオ衛星。300mmの望遠レンズで撮影してトリミング。

これが私が撮影した木星とガリレオ衛星ですが、左からカリスト、イオ、木星、ガニメデ、エウロパです。

ガニメデは大量の水の氷が存在することが知られており、地下には液体の海の層があることが確認されています。全体の水の量はもしかすると地球の水の量より多いかもしれないと言われています。

そんなことから、同じガリレオ衛星のエウロパや、土星の衛星・エンケラドスとともに、地球外生命の存在が期待されています。

ただ生命が存在したとしても、そのいずれも地下にある海の中の話なので、人類がその生命と邂逅するためには、多くのハードルがありそうですね。

上のガニメデの写真、よく見たら見慣れない生物が歩いていた、なーんてことは無いんだろうなあ(笑)

 
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